2016年01月06日

慢性病では自分に100%合う漢方薬は存在しない

新年なので「お屠蘇は東洋医学では・・・」と書いてしまいたいところですが、そんな、どこにでもありそうなコピペを書いてもしょうがないので、平常通りでいきたいと思います。

今回は、うちの患者さんからよくある質問に対しての答えを書きたいと思います。

漢方薬は体質に合わせるものです。
このあたりは、一般的にもだんだん浸透していますね。

実はこの「漢方薬と体質合わせる」というものは、非常に深い意味があります。

大半の病院や漢方薬局の現状は、一般的には某漢方薬メーカーさんからもらったマニュアルに従って「病名(西洋医学)」に合わせて漢方薬を処方しています。

ちなみに本来、漢方薬と西洋医学の病名は何の関係もございません。
先生方が簡単に漢方薬を処方しやすいようにするため、西洋医学の病名と漢方薬を結びつけているだけです。

ちょっと漢方理論をかじっていたとしても「体質」の意味を取り違えているのか、「症状」をいくつかあてはめて「この漢方薬が合っているんじゃないか」と「漢方薬を合わせて?います」

症状は確かに、あなたの体質に、つながるものですが、症状はあなたの体質を形づくる情報の1つでしかないのですね。
全身のいろいろな症状や生活環境、ストレス、過去の既往歴、血縁の方の病気など、いろいろな、あなたの情報を教えていただいて、その情報を東洋医学理論で加工したのが、漢方で言うところの「体質」となります。

「風邪」に葛根湯とか、不妊症に「当帰芍薬散」などの単純な世界ではないのです。

病院ですら、体質のことを誤解しているようなので、世間ではもっと誤解されている感じがあります。

一般的には自分の体質に合う漢方薬がどこかに存在していて、それを見つければ後は、何ヶ月か続ければ症状がドンドン治っていく。
そんなイメージがあるようです。

しかし、これは間違いではないのですが、現実は少し違います。

ここで先ほどの病院などの漢方薬の選び方に戻りますが「風邪」とか「頭痛」とか単一の症状だと確かに、その状態にピッタリと合う漢方薬はあります。
基本的に単純な症状で急性病な感じですね。

ところが慢性病になってくると漢方では1つ、1つの病気や症状に漢方薬を1つずつあてはめていくものではなく、病気、症状、状況、状態をすべて総合的に考え体質を診断して、原則は1つの漢方薬を選びます。1つの漢方薬を合わせるといってもいいでしょうか。

この時に漢方の場合は、全身の症状をお聞きしていますので、すべての症状にあてはまる漢方薬なんてものは存在しません。
体質は個人の顔のように皆違うからです。
単一の1つの症状だと漢方薬を合わせやすいのは、1つの症状だけが治るかどうかを見ていればいいのですが慢性病はそうはいきません。

だから、漢方では転方というものがあります。
要するに漢方薬を一定期間で変更していくことです。

この時に僕なんかは最初から100%ピッタリの漢方薬が現実には、なかなか存在しないことを知っているので、どの部分から治していかないといけないかを考えます。
身体と病気のパズルみたいなものですね。

漢方薬は新薬と違って、1つの漢方薬がいろいろな方向性の効果を持っていますので、その方向性のうちのどれが特に有効に効いていくのかは結果が出るまで、わからないのです。
なぜなら、漢方薬の効果の方向性は、あなたの体質との相性で決定されるからです。
ですので、漢方薬を飲まれる前に体質を分析し、何から治すべきか、何から治していけば最短になるか、治療方針を考えます。

そして、実際に漢方薬を飲んでもらいます。
そして、その結果を細かく教えてもらいます。
「あの症状はこうなった」「この症状はああなった」と事細かに。

この時に現実では、アトピーの方が湿疹がましになってきて、食欲は増したけど頭痛が出てきたなど、良くなった部分と悪くなった部分が、ちぐはぐに出てくることが多いです。現実は。

くどいようですが、1つの症状だけに注目していれば、例えば頭痛なら、その頭痛がなくなったかどうか、0か1ですが、漢方は全身の症状をお聞きして診断しますので、皮肉な話ですが、詳しくお聞きして本格的に漢方理論で治療しようとすればするほど、漢方薬を飲んだ結果、矛盾した症状が現れてくるのですね。

普通の反応はこういう状態が多いのですが良くなった部分と悪くなった部分がいろいろあると、その漢方薬は果たして体質と合っているのでしょうか?合っていないのでしょうか?

長年の経験から僕が出した答えは、慢性病に関しては、元から100%ぴったりと体質に合う漢方薬なんて、まずないということです。
おそらく、そんなものを探していたら永遠に病気は治りません。

ですから、漢方薬と体質と合っているかどうかの条件は、一般の考えとは異なります。

漢方薬と体質が合っているかどうかの条件は、
@事前に体質を元に立てた治療方針の方向性に進んでいるかどうか。
A今の漢方薬で全身、全く変化がないか、どんどん悪くなっていないかどうか。

あなたが一番、悩んでいる症状が治るのは絶対条件ですが、漢方は新薬のように、その症状を一時的に緩和したり、なくしたりと一時的にしのぐことが目的ではありません。
その症状と繋がっている根本的な問題を引きずり出さないといけないのですね。
そのためには、その時、その時に悩んでいる症状がなくなったどうかだけでなく、他の全身の症状の変化とのバランスをみていく必要があります。

漢方治療の大原則は、一時的な症状の抑制ではなく、全身のバランスを整えて結果、細かな症状をなくしていくことですから。

自分が悩んでいる症状が治っているから、その漢方薬が自分に合っている場合もありますが、他の部分の他の症状が出てきていたらバランスを崩しているわけです。

ただし、急性の病気の場合は、症状が少なく体質も複雑になっていないので、体質と漢方薬をピッタリと合わせることができますよ。
病態によって、まちまちではありますが、僕の経験では2ヶ月位前から始まった病気や症状なら、状態も単純なので、漢方薬と体質がピッタリと合い、すぐに治ります。
これより前から病気が続いていると、そうはいかなくなりますね。

後、100%合っていないと治らないのではありません。
ある漢方薬で40%、次の漢方薬で20%と漢方薬を変更している途中も治療になっているのが漢方です。

ちゃんとした漢方の治療をしたい場合は、自分の気になる症状だけが消えるかどうかでは考えないほうが結果的には早く治ると思います。
posted by 華陀 at 17:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 東洋医学について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする