2016年01月21日

1日で複数の漢方薬を飲むことはリスクも伴う

漢方薬は1種類でも、その中に何種類もの生薬が含まれています。
例えば、葛根湯なら麻黄、葛根、桂枝、芍薬、甘草、大喪、生姜と7つの生薬で耕政されています。
アトピーのマニュアル漢方でよく使う消風散なら、石膏、乾地黄、当帰、牛蒡子、蒼朮、防風、木通、知母、胡麻、苦参、蟬退、荊芥と12種類の生薬で耕政されていて、これで1つの漢方薬です。

漢方薬としての働きだけでなく、細かくみていくとそれぞれの生薬にも、それぞれの働きがあります。
いうなれば、ちゃんこ鍋とかキムチ鍋って鍋としてみると全然違う特徴の鍋で、それを細かくみていくと白菜やらキノコやらと、いろいろな味の違うものが入っています。
鍋全体でもっている味と食材個々の味があるのですね。
漢方薬で考えれば「味=効果」といった感じでしょうか。

漢方薬は「気管支を拡げる」とか「炎症を抑える」といったような西洋医学の効果ではなく、麻黄という生薬なら身体を温めて温熱と発散を行い、身体表面の水の巡りを動かし、体力があるか、ないし病気の勢いが強い状態で胃腸の問題ないものに使うなど、その生薬の働きと使える条件等が細かく設定されています。

病院の薬と決定的に違うところは、生薬は良い効果だけがあるわけではなく平等に「変化」を与えるものだということです。
だから、どんな状態の誰が飲んでも同じように効きません。

変化を与えるというのは「良い」も「悪い」も変化を与えることなので、麻黄が合う状態でない人は、胃がやられて風邪が余計にひどくなる「毒」となり、逆に胃に問題なく高熱がではじめ、普段、虚弱でない人であれば、汗やオシッコを活性化させて風邪から早く治るようにしてくれる「薬」となります。

麻黄が「毒」か「薬」になるかは、ラッキーとか病気によってではなく、現在のその人の体質や状態と麻黄の力が合っているかどうかです。

だから、インフルエンザに麻黄湯という処方の方法は漢方ではありえません。
なぜならインフルエンザは体質ではなく西洋医学のただの病名だからです。
麻黄湯が合うか合わないかは、インフルエンザかどうかではなく、麻黄湯が治療として適している症状や状態をあなたがもっているのかどうかだけです。

話がちょっと横道にそれましたが、そんな感じで漢方薬は1つ1つの細かな働きや条件をもっている生薬が何種類も集まって1つの漢方薬を形作っています。

たまに1日で何種類もの漢方薬を処方したり合わせたりしていることがあります。

何種類かの漢方薬を合わせるのを漢方では合方といいます。
これは漢方の治療理論にある方法なのですが、とても気をつけないといけない諸刃の剣となる方法です。

なんでもかんでも漢方薬同士を合わせれば良いというものではありません。
気軽になんでもかんでも合わせちゃいけないのは、漢方薬は症状ごとに合わせたりするものではないからです。

通常は、身体全身の症状や状態を総合的に判断して、できるだけ1種類の漢方薬が選ぶのが望ましいです。

先ほど、お話したように漢方薬は1種類でも何種類もの生薬で構成されていて、それが絶妙なバランスで合わさって、人それぞれの体質に合わせることができます。

1つの症状は、体質を分析していく際の1つの情報の断片でしかないので、断片の状態で漢方薬を合わせるのは、何も考えずに適当に処方しているのと同じになります。

漢方薬は先にお話したように「誰にでも共通する一定の効果」というものはありません。
その人の体質によって効果が決まります。
冷えている人に温める漢方薬は薬ですが、余分な熱のある人にとっては同じ漢方薬が毒になります。

漢方薬は一定の効果ではないので、漢方薬を飲まれた後に体質と漢方薬の相性を見て良い効果だったかどうかを検討しないといけないのですね。

漢方では飲まれた後の状態の分析と検討が必須の医学なのですが、この時に飲んでいる漢方薬が複数だと、どの漢方薬がどのように良い方向で効いているのか?または悪さをしているのか?がわからなくなります。

だから、僕がやっている日本漢方では、合方はしますが、原則は1種類の漢方薬を選び抜きます。体質を分析し考えぬいて最良の1種類の漢方薬を選ぶのですね。ベストセレクションです。

1日で複数の漢方薬を一度に処方しているところは中医学という流派でされているところが多いのですが、中医学は中西合体といって西洋医学と漢方の融合を目指していて、思想的に西洋医学ヨリな感じがありますので、症状ごとに漢方薬を合わせていく傾向が強いように思います。
なので、症状ごとに漢方薬を処方すると1日で飲む漢方薬の種類は増えてしまうのですね。

ひどいところになると「不妊症には・・・この漢方薬のセット」とか「アトピーには・・・この漢方薬おセット」など、その人の体質どころか症状すら関係なく、相談する前から病名に対してマニュアルで漢方薬の複数の組み合わせを決めているところもあります。

合方というのは、実は漢方の中では、かなりの高度な「技」なので、初回からやたら複数の漢方薬を一度に処方するところは、症状ごとに合わせているか、実は全く漢方の医学理論を知らないでやっているか、マニュアルでしかやっていないか、いずれにしても東洋医学で最も重要な「体質」をみることはできないような印象があります。
posted by 華陀 at 18:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 漢方薬の選び方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする