2016年05月06日

漢方の核心である証はいつも誤魔化される

休みの日に体調を崩して、何かをできる状態じゃなかったので、おとなしく本でも読んでようと思い、久しぶりに近所の図書館に行ってきました。

そこで漢方のことを書いた子供向けのマンガを見つけました。
マンガといっても「本当のことをマンガを通して勉強する」みたいなの。

昔は、漢方の本といったら、ほぼプロ向けの手加減なしの専門用語で構成される専門書しかなかったのですが、今は、こども向けに漢方を教える漫画まであるのですね。

漢方という文化が徐々に廃れていくことが日々、気になっている僕としては、子供向けにこんな本があるのは、非常にいいことだと思いました。

ただ、漢方の本って大きく2つに分かれていまして、1つは「この病気なら、この漢方薬を使います」という典型的なマニュアル系の本と、漢方では病気をどう考え、体質をどう分析し、治るということをどう考え、そこに漢方薬はどんな位置付けで存在しているかという、まさに僕からすると「これぞ医学書」というパターンの本と2パターンあります。

いうまでもなく本格的で専門的なのは、後者の本です。
当たり前ですよね。
漢方も薬だけの話ではなく、いろいろな医学理論がありますので。

一般的なのは、前者のマニュアル系漢方薬の本です。
ネットの情報でもよくあるのは「風邪に葛根湯」みたいな、東洋医学理論もあったものじゃないマニュアル系の情報です。

子供向けなので、本格的!まではいかなくても、せめてマニュアル系漢方の本じゃなければいいなと思いながら、読んでみました。

本のストーリーは、よくある、子供が「漢方ってなんだろう?」というのを周りの大人や専門家に聞いて学んでいくという形式のものです。

本の冒頭も、誰に聞いても「漢方って何かつかめない・・・」みたいな疑問から始まっています。
この辺は確信をついているなと思います。
実際も漢方そのものが「誰にもよくわからない」みたいな状態になっていて、結構、嘘の理屈や説明が当たり前のように出回っていて、なんだったら、それが常識になっていたりします。

いろいろな業界がありますが、漢方ほど、嘘の理論の方が常識になっているジャンルもめずらしいと思います。

で、その後、本の流れはダメな方向になっていきます。
本の最初にツムラらしき漢方薬の袋のイラストが出てくるシーンがあるので「あちゃーこりゃダメだ!」と思ったのですが、案の定、本は最初の方からダメダメ。

「薬のことは薬の専門の人に聞いてみよう!」ということとなり、調剤薬局の薬剤師に漢方薬のことを聞きにいくのですが、現実は調剤薬局の薬剤師は、ほぼ漢方を知らないと考えて間違いないです。

ちなみに漢方専門薬局と看板を立てていても、ほとんどの薬局の先生は漢方の医学理論を知りません。
なので、薬局に漢方のことを聞きにいっても、まず無駄足になる可能性が高いです。
一応、勉強するためのマンガですが、いきなりフィクションのマンガになりそうです。

ただ、そこからの漢方に対する説明は、結構、ちゃんとしていました。
特に「漢方と西洋医学が決定的に違うところは、病気に対する考え方が違う」というところは、ちゃんと描かれていると思いました。

ところが、西洋医学とは考え方が違うといっておいて、いきなり「慢性胃炎には安中散」「こむらがえりには芍薬甘草湯」と、よくあるマニュアル系漢方の話。

この後、病院の先生にも聞いてみよう!とう展開で、病院の先生は、西洋医学は検査で病気の原因を調べ、その原因を取り除こうとすることだけど、漢方の場合は、人それぞれ違う、症状を見たり、漢方の診察は体質や症状を見極めて、その人の自然治癒力を高めていく方法で治していく。説明され、更に漢方は証という独自の体質感を見極めるために漢方独自の四診で診察していくと説明されています。

おー本格的じゃん!

と思ったのですが、話はここで終わっていて、本来は、その「証」(体質)を診断し、その証に合わせた漢方薬を選ぶのですが、その事には一切触れられず、そのまま、その部分はスルー。

この話で終わっちゃうと「体質に合わせる」とか言っておきながら、結局、肝心の治療では、「慢性胃炎には安中散」のように「西洋医学みたいに症状や病名だけで漢方薬を選んでんじゃん!」となっちゃいます。

漢方の問題っていつもココです。

漢方の歴史、漢方の病気や治療に対する概念、漢方の診断方法などは、どの本もうまく書かれているのですが、肝心の「証(体質)」の話になると、もやもや〜としています。

でも、実は漢方で最も重要なのは「証をどう見立てるか?」
言い換えれば漢方独自の理論で患者さんの体質をどう見立てるか?

これが重要なのです。
でも、これが医療現場で説明されてなかったり、伝えられていないのです。

結局、どこの病院も頭痛に五苓散とか、冷えに当帰芍薬散とか、病名や症状からのマニュアルでしか選んでいない感じです。

「あなたの証は○○で、この証を治療するには、○○の調整力をもった漢方薬が必要です」
という説明を聞いたことがあります?

もちろん、証は「病名や症状」ではないですよ。
漢方薬は病名や症状で選ぶものではないのです。
ちゃんとツムラの漢方薬のマニュアルにも冒頭に「患者の証を考慮して投与すること」と書かれています。

「証」は、今の病気や過去の病気、体全体の症状や生活環境からの状態などを「総合的に分析し判断した体質」の事です。

漢方薬の調整力も「効果」ではありません。
「証」を調整する役割です。

結局、その後の展開は、ツムラの漢方薬工場であろう工場のことばっかりで、最後まで、証(体質)のことに関しては出てきません。

なので、僕の印象では、この本は勉強するというよりもツムラの会社案内か何かに思いました。

ちゃんと「証」(体質)のことを一般の方に伝えられたらな〜と切実に願います。
漢方の正しい発展のためにも、ごまかしのような病名や症状で選ぶ漢方薬はやめて、証をきっちりと説明し証で漢方薬を選ぶようになれば、漢方はもっと効果を上げると僕は思います。


posted by 華陀 at 18:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 東洋医学について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする