2016年12月16日

不眠症の漢方薬(酸棗仁湯)から再確認したこと

「あー漢方薬って、やっぱりそうなんだな」と思うところがありました。

漢方薬は基本的な治療手順としては、全身の症状、生活環境、過去の病気などから総合的に判断して、現在の「体質」を分析します。

病院で言えば、触診、血液検査、胃カメラなど、いろいろな検査を参考に病気を診断するような感じですね。

病院の漢方は、漢方薬を選ぶための問診をとらないので、西洋医学的に言えば、何もせずに適当に薬を選んでいる状態ですね。

漢方薬は病院の薬のような有効成分の効果で症状を抑えたりするものではありません。
冷えている人には温める漢方薬を選んで体をニュートラルな状態になるように持っていって不快な症状が出ないようにします。

漢方治療の基本は大体がこの方法です。
体の中のバランスを崩しているアンバランスな要素を全て探し出して、そのアンバランスの要素を打ち消す働きの漢方薬を選びます。

この方法は最も重要でスタンダードな方法ですが、漢方治療は自分のアイディアでいろいろと展開できるので、時には病院の治療のように、ある症状だけに絞って、それだけを治療する方法をとることもあります。

ただ、こういった方法は滅多にとりません。
どんな時にとるかというと、あまりにいろいろな病気や症状が混ざってしまっている時や病院の薬を長期間、飲みすぎて体内の働きがいびつになってしまっている時です。

特に病院の薬の長期間の影響で体内の働きがいびつになってしまっている時は、全身の状態から体質を分析し、漢方薬を選んでも、予想した通りに調整されないことがよくあります。

なぜ、こんなことが起こるかというと、おそらく病院の薬は体に強い影響を与え、その強い薬の影響で体内の働きを変えて、症状を抑えたりしますが、その影響が長期間続くことによって、体内の機能が変わってしまうのだと思います。

製薬会社からしたら、そんなものはないというかもしれませんが、実際に製薬会社でも10年単位の長期間の連続服用の影響の臨床データなんてありません。
また、そういった場合の現場では、1つの種類の薬だけでなく、複合的にいろいろな製薬会社の薬を混ぜて長期間飲んでいることになっているので、こんな複雑なデータは存在しないのです。

そもそも、こんな難しく考えなくとも、糖尿病を考えれば、糖尿病は砂糖を長期間、とり続けることによって、膵臓などの働きがいびつになった状態をいいます。
つまり、見方を変えれば、砂糖を長期間とることによって病気になっているのです。
誰でも普通に食べている砂糖ですら、こんなことになりますから、もっと影響のある薬なんかを長期間、飲み続けて病気にならないと考えるほうが、おかしいですよね。

そんなわけで、複数の薬を長期間、飲まれてきた方は今、悩んでいる病気以外に「なんかよくわからない病院につくられた病的体質」になっていて、漢方薬が理論通りに効かない。なんてことがあるのです。

こういう状態だと病院の薬の中毒状態を治すことが最優先になります。

病院の薬の中毒状態を治して、体を更生させて、そこから始めて漢方薬の正当な治療を始められるといった感じ。

もちろん、中毒状態を治していく時も、ただ単に病院の薬を突然やめたら、禁断症状みたいなものが出る可能性があるので、薬を減らしていくことと、漢方薬で体を補助していく折衷案的な治療をしていきます。これはうちではアトピーの方向けにも使います。

実はここまでが、ものすごく長い前置きなのですが、うちの患者さんで不眠症の患者さんがいらっしゃいます。

この方は睡眠導入剤系だけでなく、心療内科系の薬もたくさん、長期間、飲み続けてきました。
今では、病院の薬も気休めレベル。

そして、漢方治療はしても、体がいわば、病院の薬の中毒状態のようなものなので、漢方薬の効果がストレートに効かない感じ。
いろいろと漢方薬を変えても、常に病院の人工化合物である薬に漢方治療が邪魔される感じです。

そこで、一度、3日間だけでいいので、スッパリと病院の薬をやめて、漢方薬のみにしてみようということになりました。

今回は、あえて一時的な治療措置として調整する症状をあえて「眠れない」だけに絞って、病院のマニュアル漢方みたいに漢方薬で睡眠薬とよばれている酸棗仁湯にしました。
しかも効果がシャープな煎じ薬。

しかし、酸棗仁湯の煎じ薬が、すぐになかったので、とりあえず、3日間だけ違う漢方薬を病院の断薬のお供にしました。

その時の漢方薬は、僕が初回の体質分析時に通常通りの方法で選んだもの。
ただし、こちらは粉薬。
なおかつ初回から2ヶ月間であまり効果がなかったもの。

3日間は、これですごしてもらい、結果を聞きました。
すると、こちらは「病院の薬の断薬+酸棗仁湯」の前座みたいなものだったのですが、なんとこれで、何年かぶりに病院の薬を一切飲まないで、3日間、ぐっすりと眠れました。
これ以外にも家の中で一つ実行されたことがあったのですが、これは内緒。誰にでも無料でできることです。

とにかく眠れた。
酸棗仁湯はどうしよう・・・でも、この3日間でお渡しした漢方薬は、初回の2ヶ月間であまり成績が良くなかったもの。
だったら、不眠に絞り、なおかつ効果がシャープな酸棗仁湯の煎じ薬で変えてみようということで変更。

そこから1週間後・・・煎じ薬に変えた途端、全く眠れず不眠症に逆戻り。
しょうがいないので、これの前の粉薬に戻しました。

そうしたら、結局、すぐに眠れるようになりました。

病院の薬の中毒体質だといびつな体質だと考え、「不眠症」だけに絞って、病院の好きな病名だけのマニュアル漢方にしてみましたが、見事に撃沈。

結局、元の全身状態から選んだ漢方薬が一番よかったことになります。
この結果は、普段から病名や症状で合わせる漢方薬はニセモノだと考えている僕にとっては嬉しいことです。

もしかしたら、病院の薬の断薬も同時に行ったので、体が自然な状態になり、漢方薬が素直に効く体になっていたのかもしれません。
posted by 華陀 at 18:05| Comment(1) | TrackBack(0) | 漢方治療例(症例) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月07日

麻黄湯は取り扱いの難しい漢方薬

そろそろ、インフルエンザが流行ってきている時期ですね。

この時期になると毎年、麻黄湯とインフルエンザについて書いているような気がします。

インフルエンザが流行り始めると、よく聞かれるのが、「先生はインフルエンザワクチンを打っているのですか?」という質問。

僕はワクチンを打っていません。
別に放射脳的にワクチンは危ない!とか考えている派でもなんでもありません。
全種類のインフルエンザを100%防げるのであれば、打ちますが、そんな万能でもないというのが1つの理由。

もう一つは、病院と医者が嫌いなので、わざわざ行くのがめんどくさいし嫌。という本音。

そして、漢方ではインフルエンザという病名は存在せず、ただ強くて進行の早い傷寒(風邪)なだけなので、どうせ、自分の漢方薬で治すからという理由です。

ちなみに皮肉なことにインフルエンザワクチンを打った、お店を始めた初年度に1度インフルエンザにかかり、それ以降は、ワクチンを打ってませんが、インフルエンザには1度もかかっていません。

でも、毎年、インフルエンザになっている人、なっていた人が相談に訪れ、うちのチビも7年間で2回、インフルエンザをもらってきていますが、インフルエンザにはなっていないのは、漢方薬のおかげですね。

ここからが本題ですが、医者の記事やブログでインフルエンザには麻黄湯とか、言ってますが、あれは完全な間違った使い方。

漢方は体質に合わせるもので、そもそも、2000年前にほぼ、治療理論が確立していた漢方の世界にその約1800年後に始まる西洋医学の病名などはなんの関係もないので、漢方の世界に「インフルエンザ」という言葉も診断もないので、インフルエンザに麻黄湯を使うという概念自体が存在しません。

風邪の漢方治療は実は一番、難しいです。
なぜなら、漢方は、体質に合わせるもので、体質は「全身の症状」「生活環境」「過去の既往歴」などから総合的に診断していきますが、インフルエンザや風邪の場合は、熱、頭痛、咳、鼻水、喉の痛み、関節の痛み、食欲不振、胃腸障害くらいしかないのです。

そのくせ、風邪というざっくりした病名だけで、候補になる漢方薬を考え始めると「桂枝湯」「麻黄湯」「桂麻各半湯」「桂枝二麻黄一湯」「香蘇散」「柴胡桂枝湯」「葛根湯」「葛根湯加川芎辛夷」と絞っても8種類が考えられます。

8種類も候補として考えられる漢方薬があるのに、症状は、それほどの違いがない。
だから選択が非常に難しいのです。
なので高度な治療になるのですね。

こんな話「風邪→葛根湯」「インフルエンザ→麻黄湯」というようなマニュアルでしか処方していない病院には何の関係もないでしょうが・・・
僕もこんなド素人でもできそうな、お手軽な漢方処方だったら楽だろうなと時々、魔が指すように考えることがあります。

でも、こんなテキトーな漢方薬の選択方法では、治るかどうかが「ラッキー」に頼るだけという、これまたド素人臭いことになってしまうので、決してやりませんが。

漢方薬は、なぜ、そこまで細かく体質を分析して、体質と合っているものを選んでいけないかというと、副作用が病院の薬のような「ごくたまに少数の人が副作用になる」みたいな、ざっくり曖昧な薬ではないからです。

漢方薬の副作用は、至ってシンプルで、「体質と合っていない漢方薬を飲むと副作用となる」です。
これは、漢方治療の原理原則の物事には裏と表があるという陰陽の考え方からきています。
僕はこの陰陽の考え方がカッケー!なんて思いながら漢方をやってます。

漢方薬には、大きくざっくりと説明すると、ここに温める漢方薬と冷やす漢方薬があります。
冷えている人に温める漢方薬を与えれば、ニュートラルになり、治ります。
逆に余分な熱を持っている人に冷やす漢方薬を与えればニュートラルになり、治ります。

で、これを逆にして、冷えている人に冷やす漢方薬を与えると、余計冷えて、病状は悪化。
これは副作用です。

この例えだと、冷え体質か熱体質かを簡単に言ってますが、実際は、体温が高いから「熱体質」とかではありません。ここでは割愛しますが、もっと複雑に診断しないと分析できません。

肝心の麻黄湯の話ですが、麻黄湯は強く汗を出させる漢方薬です。
無汗(汗が出た後、ひく)になったら中止するものです。
そして、漢方薬にも裏表があります。

麻黄湯は、胃にダメージを与えやすいものです。
そして、漢方では、胃腸は脾の臓といって、体内のエネルギーを得るところとしてものすごく重要視しています。

風邪の時に気をつけなければいけないのは、胃腸のコンディションなのです。

そして、麻黄湯は、胃にダメージを与えやすいという特徴があります。
これは副作用ではないですよ。ややこしいですが、漢方では、良い効果、悪い効果の概念はありません。変化を与えているだけです。
副作用は、合わなかった結果論で考えます。
誰でも麻黄湯で胃にダメージが受けるわけではないです。

そして、漢方薬が体質に合っていたというのは、該当する漢方薬を飲んだ後に目標の症状等が治っていれば「漢方薬と証(体質)が合っていた」となります。

ここに麻黄湯とは対をなす桂枝湯があります。
桂枝湯は麻黄湯と反対の役割で、汗の出すぎを調整します。
こちらは胃の障害ではなく、胃が弱っていたり胃の調整が良くない人の消化器を強めてくれます。

さて、ここでリアルに風邪になる時を考えてみましょう。

風邪、ないしインフルエンザの本当の初期は、なんとなくだるく、鼻水と咳がちょこっとといった感じ。胃腸風邪というものもあるので、この後、胃が悪くなるかもしれないし、まだどう転んでいくのかわかりません。

この時に、頭空っぽでマニュアルだけで麻黄湯を選んだとします。
この後に、胃も悪くなり、下痢も出てくるような体質やパターンだと、風邪、インフルエンザは一気に悪くなります。

この場合、風邪やインフルエンザが悪化したのではなく、麻黄湯の「効果」で悪化させられたのです。
麻黄湯を処方した病院に悪化させられたと言ってもいいかもしれません。

こういった事態が起こるのが漢方薬なので、漢方で証(体質)を分析しないで漢方薬を処方してはいけないと思います。

漢方薬には薬性の強さのランクがあるのですが「強い=強い良い効果」ではなく「強い=強い変化を与えるもの」です。
したがって、体質と合っていなければ、強い副作用ともなります。
漢方薬は常に諸刃の剣です。

こういった風邪やインフルエンザの場面では、薬性の弱い方である桂枝湯から処方するのが体質と合っていなくても副作用が軽くなるので無難なのですが、薬性が穏やかであるということは同時に「速攻で効きづらい」とも言えます。
ちなみに薬性が穏やかな桂枝湯でも体質が合っていれば、速攻で効いてくれます。

なので、結局は、その人にその時の体質にピッタリの漢方薬を選ぶしか治療の道はないので「副作用を出さないように無難な漢方薬で・・・」とやると「副作用はないけど治せない」ということになってしまいます。
これはこれで、漢方医として、くやしい思いをしないといけないのです。

病院がやってる意味不明なマニュアル漢方の麻黄湯は、どうなのかは知りませんが、東洋医学から見たら、麻黄湯は決してインフルエンザ用の薬ではなく、悪化もさせる可能性のある、扱いが非常に難しい漢方薬ということですね。

posted by 華陀 at 18:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 病気を治す方法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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