2014年04月17日

漢方薬の調合ってどういうこと?

「私の身体に合わせて調合してもらえるのですか?それとも、ツムラの粉薬などの規制品の漢方薬ですか?」

よくこういう質問がありますが、これって漢方薬がすごく誤解されてるんだなぁ〜と感じる質問です。

多分、漢方薬は体質に合わせるものだから「既製品よりも調合してもらう方が、よりいいんだろう」と漠然と思っていらっしゃると思うのですが、これ大きな間違いです。

漢方相談している先生自ら誤解を受けそうな宣伝をしているものもあります。
「あなたの体質に合わせておつくりします」

でも、そもそも漢方薬って、いちからつくらないんです。
漢方って治療の考え方による派閥の違いがあって、その中の中医学とよばれる派閥の治療をされている人はツワモノになると、いちから生薬を組み合わせていって1つの処方を作り上げます。

これは皆さんがイメージしている自分だけに合わせてくれた「調合」と言えるでしょう。
しかし、実際に、こんな方法をとるのは中国くらいで日本でこんな方法をとる先生はほとんどいません。
日本では例え煎じ薬で、いちから生薬を組み合わせて処方をつくっていったとしても、結局、いわゆる既製品と思われている基本処方をただ単に生薬から、つくっているだけだったりします。
要するに出来上がりは既製品と一緒ということ。

ただし日本でも、その基本処方に更に他の基本処方を加えたり、生薬を1つ、2つ加えたりすることはあります。
基本処方と基本処方を合わせることを合方と言います。

これも調合ではないですが、その先生のオリジナルですね。
基本処方に生薬を1つ、2つ加えるのは加減と言いますが、これもオリジナルです。

実は一般の人に既製品と思われている漢方薬は医薬品として認可を受けた処方だけで212種類あります。

例えば僕なんかは不妊症の場合、20種類の基本処方の中から何がその人の体質に合うのかを考えますが、それでも20種類もあるんですよ。

漢方薬の場合、どれくらいの期間で効いてくるかなんて決まってませんので、どの処方が合うかなんて20種類だけでも天文学的な確率になります。
つまり既製品だけでも一人一人の体質に合わせることが、できるほど膨大な種類があるのです。

中国では調合もされていますが、いちから、その人だけに調合することは実は大変なリスクがあります。

漢方の治療の利点って2千年前からの膨大な知識と経験があり、それが学問的にしっかりとつくられていることです。僕がやってる日本漢方は特にココを大切にします。

基本処方を使うというのは、見方を変えれば、2千年間、なくならずにそれなりに結果を残してきたデータのある処方達です。

これはすごいことですね。
新薬だって古くから使われているアスピリンで、たかだか140年くらいです。
漢方薬の基本処方達は2000年間使われてきているのです。
アスピリンの140年間のデータと漢方薬の2000年間のデータ。どっちがすごいかは一目瞭然です。

歴史があるということは、それだけいろいろな体質の人に使って、良い効果があったり又はすごい副作用があったりといろいろな紆余曲折があったのです。

また、一人の人間が使ってきたのではなく歴史の中でいろいろな考えの漢方の先生が使って、その結果をデータとして書き残してきたのですね。
ちなみに漢方では歴史上、様々な処方がつくられてきていますが、その歴史の中で役に立たない処方はたくさん消え去っています。

それらが書物となって僕ら漢方家はどんな体質の人にどんな風に使えばいいのか、
どんな体質の人に使ってはいけないのかがわかるのです。

しかし、いちから調合するということは1人の先生のたかだか数人、数年の経験。
アスピリンの140年にも満たないです。

良いか悪いかのデータが2000年間の歴史から見ると圧倒的に不足しているのです。
例えば40年間、漢方一筋でいちから調合してきたとしても、基本処方のデータには1960年分足りない。
いわば検証されていない未知の処方ですね。
効果も危険性も未知数。

いちから調合して、つくった処方をこれからいろいろな先生が300年位、使い続ければ何かがみえてくるかもしれません。

こういった調合って中医学派の先生がよくやるとお話しましたが、この学派は成り立ち上、西洋医学の考え方が入っています。
どちらかというと伝統的な漢方の考え方ではなく西洋医学や化学の理屈で調合するようなところもあります。

こういう調合の仕方って逆にもったいないと思います。
だって、2000年間の膨大な東洋医学のデータを無視して、自分の何年かのデータと思い込みでやるんですよ。
僕だったら2000年間のデータに勝てる気がしません。
また、そもそも西洋医学の理屈と漢方の理屈は何の関係もありません。

ということで漢方薬は調合ではなく「多数の処方から選び出す」というイメージが正しいです。
基本処方とそれらの組み合わせだけで500種類はあると思います。

いちから調合してもらったほうが自分の体質に合わせてもらっているように感じますが、その方が医学的には危険度が高くなっているのですね。

僕はまだその500種類をマスターできていません。
今も勉強中。おそらく一生終わらないでしょう。

基本処方群の500種類以上をマスターできたら、一から調合してみたいですね。
300年後位になりそうだけど。
posted by 華陀 at 17:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 漢方薬の中味について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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