2014年11月25日

漢方ジプシーさん

漢方ジプシーって言葉を知ってます?
僕は昔に、うちのメール相談にきた患者さんから、この言葉を教えてもらいました。
だから、こういう言葉が一般的に通用するのかどうかはわかりませんが、その時は言い得て妙だと思いました。

漢方ジプシーって、どう意味かというと、ネットとか本で漢方の事を自分で検索して、自分で漢方薬を選んで自分で漢方薬を買って飲む。そして、良くなったり、悪くなったりを繰り返して、いろいろなお店や病院で、漢方薬を飲んでいる人のことらしいです。

それが、なんでジプシーかというと良くならないから、病院や漢方薬を売ってる店を次々に渡り歩くからジプシーだそうです。
ね、なかなか言いえて妙でしょ!

その時はへぇ〜と思っていましたが、それから、うちにもよくジプシーさんが迷いこむようになりました。
この現象ってある意味、今のネット社会の弊害なんじゃないかと思いました。

この前はこのブログの記事で、現代は知識的な情報はGoogle先生がいるんだから、医学知識だけ詰め込んで患者一人一人の体質をみれない医者は時代に取り残されるんじゃないの?ってのを書いたのですが、
医者は今の時代に取り残されてるように感じる。
漢方ジプシーさんの場合は、それとは逆のGoogle先生の知識による弊害ですね。

今やGoogleでなんでも検索できます。
だから、漢方の事も検索してみようってことですよね。
漢方の事だって、何かしら答えが出てきます。
そしたら、自分でそれを見ながら、自分に合ってそうな漢方薬を選べます。
気分は漢方家!

前回の記事でGoogle先生がいるんだから、知識に相当する部分なんて、例え、よく勉強した医者でも教えてもらう必要なんかない。Google先生の方が遥かに知っています。と言いましたが、これって厳密にいうと、前提に生理学や病態生理、薬理学の基礎的な考えを把握していないと、いくら検索で答えが出てきたところで実は理解できません。断片的な知識がバラバラに集まるだけ。

僕は、師匠の外科医の先生から生理学や病態生理、医学論文の読み方や臨床試験の見方などを教えてもらったので、西洋医学の膨大な「知識」は詰め込んでいませんが、それを理解するための考え方やノウハウは持っています。
だから、ネットでチョコチョコと西洋医学の「知識」を検索すれば、すぐに答えが見つかります。

しかし、前提になる考え方すら知らない人が、効きそうな薬や自分の病名っぽいものを調べても、その情報は役に立ちません。
いわば、膨大な情報から偽物を除けて、本物の情報に辿りつく、ガイドとなる考えやノウハウが最低限必要です。
そのガイドになるのが、西洋医学で言えば、生理学や病態生理学、薬の薬理学です。
人間の体はどういう風に食べ物を消化するのか?
胃痛はどうやって起こるのか?
薬は化学的にそれをどうやって治すのか?
体の細かな部位の名前や薬の名前は調べればいいですが、この考えや流れは、なんとなくでも理解していないと、何をどう調べればいいのかわからないし、また根元の調べ方が間違っていたら、ただ単に間違った知識が増えるだけです。

漢方ジプシーさんになる問題は、正にコレです!
漢方ジプシーさんになる人は、漢方薬は自分の症状や病名にあてはめていけば、いいと考えているようです。
残念ながら、この問題って、漢方ジプシーさんが悪いわけではないかもしれません。
なぜなら、大半の病院が、漢方ジプシーさんと同じように、病名や2,3症状だけをあてはめて漢方薬を処方しているからです。

「まさか、病院がそんなテキトーな方法で処方しているはずがない!」
誰でも、そう思いますよ。でも実際に、そんなテキトーな方法で処方されているようです。
だったら「医者がそんなやり方やってんだから、漢方薬選ぶのって素人の私でもできそう!」って思ってもしょうがないかも。

ネットで調べて、自分で漢方薬を選ぶ方法には、3つの問題があります。
まず、病名は西洋医学のものであって、漢方の世界では東洋医学的な病名があり、それは西洋医学とは異なります。当たり前ですが。
だから、病名で選ぶ方法は漢方にはありません。

2つ目は漢方は2、3の症状をあてはめて選びません。
素人の人が自分に合っている漢方薬を調べる場合は、大概、自分の気になっている症状を2、3ピックアップして、それに合致しそうな漢方薬を調べます。
でも、漢方は全身の症状や状態を調べて、そこから体質を分析し、体質に合わせて処方します。

冷静に考えてみてください。
人間の症状なんて、それほどバラエティーに飛んでません。
インフルエンザもエボラ出血熱も症状だけで言ったら、死ぬ直前までは頭痛、発熱・・・みたいに同じなんですよ。

女性の悩みの症状も大体が、手足の冷え、月経時の頭痛、それに胃もたれが加わったりと、人間の症状なんて、それほどバリエーションがありません。どれも似通った症状なんです。
だから、症状だけあてはめたら、とんでもない数の漢方薬が自分に合っているかのように感じます。

「えっ私は自分の症状に合っている漢方薬を見つけましたよ」

それは、ネットや本などに書いてあるのは特徴的な症状のみだからです。
合っているのを見つけたのではなく合っているように思えただけ。
逆にいろいろな漢方薬を知らないから選べるのです。

自分の症状も漢方薬の種類も、あらかじめ限定して見ているからです。
全身の症状を自分で出して、候補になる漢方薬も、30種類ほど、なるべくたくさん出してきて選んでみてください。
体質判断なしには、絶対に選べないから。

僕は大体、1つの病気などで30種類の漢方薬を候補として考えますが、これが5種類とかだったら、なんとなく選べます。
しかし、候補になる漢方薬が少なくなるということは、自分に合った漢方薬の可能性も狭めているということです。
「でも、私は自分で選びましたよ。」
選べたように思えるのは、ただの自己満足かもしれません。

なによりも大問題は、その見ているお手本のサイトが、合っているかどうかわかりません。
僕はこの業界に長いこといますが、病院も薬局も含めて、体質を導き出して東洋医学的に治療できるところは、ほとんどありません。

実際に、僕みたいな記事の内容を書いているとこなんてそうないと思います。
ということは、お手本と思っているサイト自体が間違っている可能性があるのです。

漢方の知識を詰め込む必要はないですが、せめて、東洋医学の生理学や病態生理学、体質学、薬理学の考え方位は把握していないと、ネットをチョコチョコ見た位でできるわけないですよ。

病院も素人の漢方ジプシーさんと同じような感覚でやっているところが多いように思います。
うちの患者さんから、よく聞きます。
ぜひ、患者さんの手本となるよう1つの医学としてやっていただきたらなぁ〜と思います。


posted by 華陀 at 19:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 漢方薬の選び方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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