2015年09月08日

漢方薬は体質を変えることができるのか?

少し昔によく漢方と西洋医学が比べられて「漢方は体質が変わるけど、西洋医学の治療は体質を変えることができないので根本的には治らない」なんてことが言われていました。

これに対して当時の医者は「漢方薬で体質が変わるはずがない」とか言っていたり、今度はその反論に対しての反論で漢方側では「元々ひどいアトピーの人が治った後に遺伝子検査してみたら体質が変わっていた」とか、まゆつば臭い情報なども出てきたり。

漢方薬は体質を変えることができるのか?
みたいな話がよくありました。

今は病院側も当時と違って、西洋医学の治療薬は対症療法で、その場しのぎのもの。ということが一般の人にバレてきています。
そんな状況下で医者自身が「漢方治療をしたい」と思っていなくても社会的な流れで漢方薬を使わざる得ないような流れになってきているので「漢方薬で体質が変わるかどうか?」的な論議がなくなりましたが、それでもうちに相談に来る医者や看護師さんからは、今も「漢方薬って体質から変えることができるのですか?」という質問がチラホラあります。

僕も昔は「漢方薬は体質を変えることができるからすごいもの」と考えていましたが、いろいろな相談を経験するうちに、その考えも変わってきました。
そもそも、その考えは根本的に漢方を誤解してるんじゃないか。と思うようになりました。

「体質が変わる」というものをどういう見方をするかにもよると思うのですが、少なくとも遺伝レベルで変わるとか、元々の体質から、ぜんぜん違う体質に変わることはないというのが今のところの僕の考えです。

そもそも、病気の状態は元の体質が変わった状態ではありません。
例えば、アトピー。これは突然、体質が変わったから湿疹が出るようになったわけではありません。
アレルギー反応を過剰にするような要因がたくさんあって、それが積み重なって湿疹が繰り返し出るようになります。
本来の正常なアレルギー反応であれば、湿疹が出ても次の日には自然になくなっているのです。

このときに西洋医学ではアトピーの原因がいまいちよくわらないので、とりあえず、ステロイドの力で強制的に皮膚の炎症をしずめて湿疹を引っ込めます。
そうしてステロイドの効果がある間だけ強制的に無理やり湿疹が出ないようにするので対症療法と呼ばれるのですね。

漢方は、湿疹が出ているのが、自律神経系の気の問題なのか?余分な熱が頭を中心とした上半身に滞っているのか?血が滞っているのか?などなど、その人独自の原因を考えていきます。(アトピーだったら→消風散。なんて方法では処方しません。それは偽物漢方かも)
この気がどうとか、熱がどうとかの状態のことを漢方では「証」とよぶのですが、その人の元々の体質のことだけでなく現在の体質(状態)も指しています。

皆さんがイメージしているような生まれつきの体質は、どういった証に陥りやすいのかのクセがわかるだけです。
例えば、元の体質で肝臓系が弱い状態なら「余分な熱がこもりやすい傾向がある」などです。

アトピーになっているのは、元々の体質が大きく変わっているのではなく本来の自然の生活リズムにはない食事の質や睡眠などの生活環境の影響が引き金となり、それが元の体質に影響し、一時的に病的状態になっているだけです。

インフルエンザになったら高熱が出るのと一緒で、インフルエンザになったからといって、高熱体質に変わるわけではありません。

ややこしくなってきたので、まとめると、生まれつきの体質があって、それになんらかの悪い影響が影響し、一時的に現在のアトピー体質になっているといった感じです。

だから漢方薬の役割は体質を変えるのではなく、もとの皮膚のトラブルがなかった普通の体質に戻すように調整するのです。
例えばアトピーの方で、余分な熱がある証だと判断すれば、その余分な熱を発散させたり、上半身から下に巡らせてあげれば、湿疹が出なくなります。
そうすると、元のツルツルの皮膚だった体質に戻るだけですね。

漢方の病気の治療は大体こんな感じで、正しい調整を行って、何も問題なかった頃の状態に戻すだけです。

確かに誰しもが生まれつきの体質を持っていますので、その体質の弱点をフォローするように漢方薬を飲んで、その弱点をフォローすることはできます。

しかし、生まれつきの体質が完全に変わるかというとそれは難しいような気がします。
なぜなら、それは個性でもあるからです。

漢方の世界では全ては陰陽の法則で動いていると考えますので、絶対的に強いとか絶対的に弱い体質というのはありません。

冷える人は温めると楽になりますが、熱が多い人は冷やすと楽になります。
どっちがいいとかではなく「そういう体質」そういう個性なんですね。
顔や体格などと一緒です。

なので、何か決まった漢方薬をずぅーーと飲んでいたら、どんな病気にも負けない万能体質になるのではないのですね。
それは陰陽の法則からいってありえません。
だから「ずぅーーと同じ種類の漢方薬を飲み続けていれば治る」というのも漢方の世界ではありえないのです。

見方を変えれば、元の体質のせいでずぅーーとアトピーということもありません。
元の体質×今の生活環境=アトピー なのです。

寒い冬、暑い夏、そのときの環境と生まれつきの体質が相まって、なにがしかの病気になるので、その時の体質(証)を判断し、いち早く漢方薬で対応すれば、大事には至らないのです。

漢方薬をその時の体質(証)に合わせ細かく微調整して、しばらく飲み続ければ、何も飲んでいなかった時よりは体は強くなります。
ある程度、強くなれば、自分の体質に合わせて生活養生をしていれば、漢方薬をやめても病気にならない体はつくれます。
ただし、ずっと何の病気に対しても強い体質になるわけではありません。

漢方薬は不思議な力で体質を変えるものではなく、厳密にその時の体質(証)を診断し体内を調整し元の良い状態に戻してくれる非常に理論的な医学なのです。


posted by 華陀 at 17:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 漢方ってなんだろう? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック