2017年02月02日

漢方薬はマニュアルで選んでも治らない

みんなの家庭の医学というテレビ番組で漢方の事をやっていたらしいですね。
(僕はテレビを見ませんので僕は番組を見ていません)
治療提携している鍼灸の先生から、先生にブログのネタを提供しますよ。と話を聞きました。

なんでも冷えの女性が出てきて、千葉大学の漢方の先生が、いろいろと診察して、その冷えの原因を「ストレス!」と言ったらしいです。

正直、この話を聞いた時、少し悲しかったです。
千葉大学といえば、日本漢方の大先生の母校です。
バリバリの超優秀な日本漢方医がいた大学の漢方の先生の見立てが「ストレス」って、そこらのサプリを売ってる怪しい販売員じゃないんだから、嘘でも、もうちょっと漢方医らしく「証」(東洋医学的な病的体質の要素)を診断して「証」とは何かをズバッ!と説明してほしかったですね。

更におかしな話を聞いたのが、その先生、漢方のガイドラインをつくっている先生とのこと。
???
漢方のガイドライン・・・漢方は個人、個人のその時の「証」を診断して、その証と治療戦略に基づいて漢方薬を選びます。
先生ごとに分析方法や証も治療戦略も変わるので、ガイドラインで漢方なんかできません。
もし、なんらかのガイドラインがないと漢方ができないというのであれば、それは、ただの勉強不足の人です。

厚生省の役所仕事で、ガイドラインやマニュアルをつくって、どの医者も漢方ができるようになる基準を作りたい気持ちはわからないでもないですが、漢方は個人の体質を調整する治療方法なので、ガイドラインを決めること自体、漢方薬を漢方らしく使えなくしているのと同じことです。

このガイドライン、どういう意味合いでのガイドラインか詳しくは知りませんが、おそらく、西洋医学の病名や症状をあてはめて、マニュアル的に漢方薬を選んでいくような今の病院がやってるファンタジーな方法を突き詰めていく感じなんじゃないかと勝手に推測します。

例えば、漢方では、治療の考え方の違いで中医学、古方、日本漢方と大きく3種類の方法があります。
この方法論は、どれが良いとかどれが優れているというような優劣などは、誰も決める事ができません。
どれも体質の診断の理屈や診断方法、漢方薬の選び方などが違い「それぞれの治療の考えがある」といった感じ。

この方法論。漢方では派閥と言いますが、この派閥のどれかを基準にするというのなら、まだわからなくもないです。
例えば「病院は中医学を漢方の基準医療の方法とする」などです。
ただ、中医学をガイドラインにしたところで、自分の考え方で、体質を分析し、漢方薬を選び、治療戦略を策定するというのは、変わりません。

やっぱり、西洋医学の病名や症状からあてはめて、漢方薬を選ぶという本来の漢方には一切ないファンタジー理論をガイドラインにするのは東洋医学的に異常なので、そんなガイドラインをつくったところで、診察する先生自身が一人一人、治療方針をつくらないといけないことに変わりないわけです。

西洋医学は、平均の医学で、個人の体質などは考えません。
小さな子供も、体格の良いアスリートも病弱で年老いているおばあちゃんも「頭痛」を治すのは、みんな同じ鎮痛剤を使います。
個人差を一切、考えないで、「頭痛」という症状だけに対して、一時的に治る薬を処方します。
時には効かないタイプもいますが、個人差を考えず「人間」だったら「効くはず」という前提で話がすすんでいきますので、効かなかった人は「なぜ効かなかったか?」の理由はわかりません。
「おかしいな・・・効くはずなんだけど・・・」で終わり。

漢方は西洋医学とは全くの逆で、一人一人、体質が違うと考えます。
顔や体つきと同じです。全く同じ人なんていませんよね。
小さな子供、体格の良いアスリート、病弱で年老いたおばあちゃんの「頭痛」を治すのは、全部、違う漢方薬になる可能性が高いです。

頭痛だったら呉茱萸湯とか、五苓散というのは、呉茱萸や五苓散が直接、痛みをとる働きなら、効くのですが、呉茱萸や五苓散もそういった効果ではないし、漢方は直接的に症状をとるために飲むものではないからです。

漢方は、頭痛そのものを直接的に治すものではありません。
漢方において「症状」とは体の健康を保つ要素のバランスが崩れた結果、出てくる警告音のようなものだとみます。
症状はあくまで警告音なので、警告音を直接切って、音をなくしても(症状をなくす)根本的な問題は何も解決しないのです。

体の中のいろいろな要素のバランスが崩れて症状が出ているので、全身の状態をみて、なぜ、頭痛という症状が出てきたのかを分析します。
それは、気の滞りと上焦部位(肩から上の部位)の水の滞り、それに寒証(冷え)という病的な体質(証)から出てきた症状かもしれません。
証を分析をする際は、全身の症状や生活状態などを調べていきます。
例え、不快な症状が「頭痛」だけであっても、食欲、胃腸の状態、睡眠に関すること、オシッコや便など、全身の状態をかならず調べる必要があります。

この場合、頭痛は、気滞の証、上焦の水毒の証、寒証という3つの証の組み合わせによって、現れていると考え、これらの3つの証を全部調整できる漢方薬を選びます。
ちなみに、これは僕がやってる日本漢方の分析です。

頭痛に効きそうな漢方薬を順に試していくのではありません。
漢方の初心者の頃は、どうしてもレベルが低いので、病名や症状にあてはめるところから、始めますが、あくまで初心者の頃の方法なので、そんな方法でやってていいのは、せいぜい6ヶ月位じゃないでしょうか。どんなものでもそうですが、いつまでも初心者レベルでやってちゃダメですから。

そして、肝心なのはここから。
本格的な漢方のマニュアルでも頭痛によく使われる漢方薬というものはあります。
ツムラのマニュアルを見ても7つ以上の候補があります。

今のガイドラインがどんなものか知りませんが、普段は、この候補から、いくらか書いてある頭痛以外の症状があてはまるかどうかを探していくのでしょうが、ここに書いてある症状は、あくまで例です。

その証拠に他の漢方薬の本を何冊も見比べてみてください。
漢方薬に適応症と書いてある症状は、本によって微妙に違うものが書いてあるはずです。
そうなったら、どの本をマニュアルにしますか?
ひょっとしたら、この「病名・症状=漢方薬」というマニュアルを標準化して、ガイドラインにするのでしょうか?

そもそも、現実には適応症状の全部の症状が一致することなんて、ありません。
「この症状はあるけど、この症状はないな・・・」
悲しいかな、詳しく見ていけば、見ていくほど一致しません。

そうしたら、どうするか?
「多分、大体合ってるから、これでいいか!」って急にテキトーになります。
でも、それっておかしいですよね。
症状を合わせるのであれば、全一致じゃないと「どれでもいい」になってしまいます。
これが、実は、漢方の勉強を始めて、本格的に勉強しようとした時に出会う大きな壁です。

最初は病名や代表的な症状だけをマニュアル的にあてはめて、処方しているのですが、その方法は、あくまで初心者用の方法で、当然、何ヶ月か経ったら、そのド素人の方法から抜け出さなきゃいけません。

そして、その次に、漢方薬の適応症状も見て、この適応症状が、あてはまるものを選べば、効く可能性が高いんじゃないかと思いはじめるのですが、皮肉な話、勉強すればするほど、その漢方薬に合う適応症状が増えて「あてはまる症状だったり、あてはまらない症状だったりが、ごちゃごちゃになって、どれがどれだかわかんない→どれでもいいや」状態になり、そのまま、レベルの低い占いのような病名・症状漢方を続けるか、漢方をやめるかという岐路に立たされた人は大勢います。

どんなガイドラインをつくっているのか知りませんが、ガイドラインをつくるのであれば、処方マニュアルではなく、中医学、古方、日本漢方の派閥をいずれかに設定し、どの診断基準を使うのか?で設定すればいいのではないかと思います。

ちなみに「漢方は気・血・水で診る!」みたいな、これまたファンタジーな話が一般的ですが、例えば日本漢方なら「気・血・水」「八綱弁証」「五臓六腑」「五行」「六経」「病因(外因・内因)」「八法」「治法」などの分析ツールを使って証(体質)を分析します。

「気・血・水」は体質分析ツールの1つにすぎませんので、もし体質分析を「気・血・水」だけでやってるなら、そういう先生は大丈夫かな?という感じです。


posted by 華陀 at 18:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 病気を治す方法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/446577521
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック