具体的にどんなことが予防なのかは、今は予防医学という言葉だけが走っている状態のようにも思います。
病気じゃなくても検査をしておくことや血圧や心拍、血糖などの日々のバイタルサインを見ていくことが予防と考えられていたり、単にサプリメントを飲むことが予防だったりと考えられていたりするようです。他にもいろいろあるかもしれませんが・・・
病気になる前に病気にならないように防いでいく。
漢方を始める前は、僕自身も現在の予防医学の感覚が重要だと考えていました。
しかし、漢方治療を本格的にやればやるほど、1つの意外なことがわかってきました。
漢方では、未病という考え方があります。
未だ病気にならざる時に治してしまう。
正に予防医学じゃないか!と思っていたのですが、治療をやっていくうちに、その解釈も微妙に違うんじゃないかという感じがしてきました。
漢方では、その時点の体質を見ます。
一般的なイメージでは、おそらく、人それぞれの生まれつきの体質があって、その生まれつきの体質を根本的に治してくれる漢方薬があって、それを飲み続けたら根本的に治る・・・みたいなイメージだと思います。
半分は正解かなと考えているのですが、半分は不正解という感じ。
僕が現場で治療している感じでは、誰しも生まれつきの弱点的体質があるというのは、合っていると思うのですが、別に、それだけで病気になっているわけじゃない。
どちらかというと、現時点の環境(仕事、ストレス、食事、睡眠、住まいの環境など)の影響を受けて病的体質になるといったほうが割合が大きいと考えています。
その時に生まれつき、もしくは家系が継いできた体質の傾向の病気に傾いていく。といった感じですね。
生まれつきの素因的病的体質が20%位あって、残りの80%は後天的な環境等によって作られ発病する感じ。
西洋医学では健康か病気かという、ある種、デジタル的な捉え方をしますが、本来の漢方では西洋医学のようなはっきりとした病気の概念がありません。
病院は何を勘違いしているのか、西洋医学の病名で漢方薬を選ぶマニュアル処方をしていますが・・・
西洋医学だと、検査でひっかからなければ、病気でないイメージですが、漢方は全身の働き(例えば血液循環、筋肉の働き、消化器の働き)の調和がとれているかどうかをみていくので、このラインから向こうは病気。という概念がありません。
病院の検査でひっかからず、病気も何も言われていなくても、雨の前日にかならず頭痛になるのは、漢方的には全身の調和が崩れた結果、起こっていると考えるので、それは明確に病気なんですね。
だから、漢方薬も生まれつきの体質に絶対的に合うものなんかはないし、現在の体質も季節の影響を受けて変化したり、仕事で、ものすごいストレスを受けて体調が変われば、それも体質が変わっていくことになります。
つまり、漢方では、よほどでない限り、本当に健康な人は、なかなか存在しません。
特に現在の環境は、健康になろうと頑張っても体に優しい自然な生活ができない時代なので、「本当の意味で長期間、健康な状態」を保つのは至難の技です。
だから、僕も検査数値は悪くないし、病気の診断を受けたこともないですが、毎日、全力、全開で元気か?と問われると何かしら、不調がところが見つかるので、その時の自分の体質を判断して一定期間で種類を変えながら漢方薬を飲んだり、週に1回、バランスをとるために鍼治療も受けています。
いわば、東洋医学的に考える本当の健康とは楽器のチューニングが合っている状態ですね。
楽器をやっている方なら常識ですが、使った途端に少なからず、チューニングは狂っていきます。
また、終わったらチューニングを行い健康な状態にするわけですね。
だから、漢方の未病を治すというのは、何かの病気になる前に治すというよりも、常に病気になる恐れがあるので、それを漢方薬や自分の体質に合った養生で毎日、チューニングしておくことだと思うわけです。
今、騒がれている予防医学も日々、事前に検査をしたり、毎日のバイタルサインを調べておけば、大きな病気は予防できると思いますが、現実から考えると、大きな病気だけをざっくりと防ぐという感じで、それはそれで重要だと思いますが、日々の辛さを防いで病気にならないようにするには、ちょっと遠いですね。
本当の予防は、やたら検査をしたり、体質に合っているかどうかもわからないサプリメントを漠然とした予防で飲むのではなく、現時点の自分の体質を知り、弱点を知り、日々のチューニング(体質にあった生活方法やメンタルセット)を知り、それを実践することが、具体的で実践的な予防ではないかと思います。
なので、予防は、その人の体質や環境で人それぞれ、方法が変わるということですね。