胃痛という症状を治すためには、胃酸を抑える胃の薬。
西洋医学では、1つの原因を特定し、その1つの原因を抑える(治す?)薬を使います。
なので病院では、いろいろな症状があると、鎮痛剤+胃の薬+睡眠導入剤など症状を訴えた分だけ増えることがよくあります。
ところが、日本漢方では西洋医学とは逆で、1つの漢方薬で1つの症状だけをなんとかするというのはできません。
言い方を変えれば日本漢方は、1つの漢方薬で1つの症状だけをなんとかするものではないです。
なぜか?
それは西洋医学と漢方の治療の考え方の違いにあります。
西洋医学の治療は、ほとんどの治療薬が対症療法といって症状を抑制したり緩和するのが目的です。
簡単に言ったら対症療法とは、お薬が効いている間はそのお薬のターゲットとなる症状は、弱くなるか、なくなりますよっていうことです。
効果時間はお薬によって変わりますが、例えば鎮痛剤で2時間の効果があるお薬なら2時間は痛みが抑えられ、効果の時間が切れたら痛み復活!
とりあえず今の症状に対応するということですね。
漢方でも対症的に使う漢方薬はありますが、急性以外は滅多に使うことがありません。
漢方の場合は、例えば痛みなら、●●漢方薬と確実に決まっているわけではありません。
例えば芍薬甘草湯は構成されている生薬が芍薬と甘草の2つなので、効果もわかりやすく、漢方では「構成される生薬が少ないほど効き目はシャープ」という法則があるので西洋医学のお薬のように1つの症状だけに使うことができます。
ただし、このお薬。
西洋医学のお薬の自然バージョンじゃありません。
あくまで急性の痛みにも使うというだけで、そこは漢方薬。
体質は選びます。
どんな体質の人にでも効くわけではないのですね。
痛みでも筋肉の緊張や気の緊張からきている痛みなら、痛みという1つの症状だけで効かすことができるのです。
漢方薬ではこういった、体質をみないで使えるお薬というのは非常に少ないです。
風邪系の麻黄湯、葛根湯、桂枝湯、柴胡桂枝湯、小柴胡湯などは別として、急性の1つの症状に使えるのは、あと五苓散、人参湯、香蘇散などそれほどたくさんの種類はありません。
ちなみに、これらの処方は痛みに使うのではありませんよ。
使い方は秘密です。(急性に使う時は危ないからね★)
さて、話は戻りますが西洋医学のお薬が1つの症状を抑えたりできるのは、その症状にターゲットを絞ってるからです。
頭痛が起こる時は、痛みにつながる物質が身体の中で分泌されます。
それを薬の力で抑えてしまうのですね。
痛みにつながる物質が抑えられれば痛みが起きない。という理論。
これは、体質関係なく人間の痛みの構造を研究し、その痛みに対してだけ、なんとかなるように薬を作っています。
西洋医学の場合は体質別の個人ではなく「人間」の痛みとして見ていますので、痛みが起こるメカニズムは「人間」であれば皆、同じだという前提にもとづいています。
だから、「人間」の痛みという1つの症状に効くようになってます。
漢方の場合は西洋医学とは根っこから治療の考え方が違います。
漢方の場合は、人間の身体の構造を調べた結果、それを変える成分が漢方薬にあるわけではありません。
漢方では痛みも一人一人違うメカニズムで起こっていると考えます。
痛み物質は関係ないんですね。
漢方は身体全体をみて健康を保つバランスが崩れているので、それを正常に整えることが目的で1つ1つの症状に対応しません。(漢方をしている先生でも勘違いして1つ1つの症状に1つ1つ漢方薬で対応していることもありますが・・・)
頭痛や胃の痛み、にきび、咳などは、バラバラに存在しているのではなく、全ての1人の身体で起こっていることだと考えるので全体を捉えようとします。
そして身体全体を整える漢方薬を合わせることによって結果的に頭痛や胃の痛みなどがなくなるのですね。
漢方では治療の考え方が西洋医学と全く違うので、1つの症状だけをとることや1つの原因だけを取り除くことはできないのです。
頭痛では、ある体質の人は、水の巡りの問題。
ある体質の人は熱が身体の上部で溜まってしまう問題。
など、いろいろな体質によって様々です。
西洋医学のように体質関係なく「人間」の痛みの物質に対応するのではないのですね。
漢方薬ではプロラクチン値を下げる漢方薬とか、頭痛だけを止める漢方薬とか、
女性ホルモンを活性化させる効果の漢方薬とか、そんな部分的な事をなんとかするものは存在しませんし、そうやって使っているのであれば、思いっっっっきり!間違っています!!
現在の体質はどんな体質でその体質を整える漢方薬は何か?
それが合っていれば結果的に身体全体の症状がよくなってきます。