伝統的医学は長い歴史の中でいろいろな派閥や流派に別れました。
それをそれぞれの漢方医が自分達なりの信念と理解でもって自分流をつくりだし治療をしています。
西洋医学は、ある程度世界共通の学問のガイドラインがあり、それに則って、治療を考えていきます。
程度の差はありますが、西洋医学の知識は、どの病院でも変わることはありません。
ところが、漢方には、学校などがありませんので、自分自身で勉強しなくてはいけません。もしくは、昔から伝わってきている技を知っている漢方医に弟子入りすることです。
逆に言えば、優秀な成績で大学を卒業しても、漢方では何の意味もありません。
そんな話になると、ちょっと詳しい先生なら、漢方にも中医学という学校も資格もあるじゃないかと反論されそうですが、中医学は伝統的漢方とは少し違った医学です。
中医学は、60年前にそれまでバラバラだった各流派の医学をまとめたものです。
ここで勘違いしてはいけないのは、それまでの伝統医学が間違っていたから、新しい中国医学をつくったわけではなく、ただ学問的に整理するためにまとめただけです。
ですから、強引にまとめた経緯上、診察や処方理論に矛盾もみられ現在も問題は山積みです。
要するに漢方に関しては、大学や資格や権威的な名声は何の意味もないです。
目の前の患者さんを治せたかどうかだけです。
僕は過去に10万人に1人と言われる難病「後縦靭帯骨化症」を治してきましたが、体質によったら、ニキビの人すら治せないこともあります。
体質ごとに治療が変わる漢方では、いくらたくさんの人を治しても、治った人にとっては名医ですが、治らない人にとっては名医ではありません。
と言ってしまうと身もフタもないので、治すのは当たり前として、最低限、どんな漢方医が名医か考えてみましょう。
漢方は、マニュアルが通用しません。
本に書いてあることは、本の書いた人がそう思っただけで、その本の先生が治した人の話が自分の患者さんの体質と一致するとは限りません。
つまり、本をたくさん読んでそれを参考にして処方しても治りません。
あくまで自分がそれらを参考に鬼のように勉強をして、その場で一人一人違う体質を見抜いていかないといけないです。
まず、名医は、病名で処方しません。
その人独自の体質を分析します。
そして、漢方というのは治った時に初めて分析した体質とそれに合わせた漢方薬が合っていたということになるので、患者さんごとにその都度、その都度、治療方針を考えているかどうかが、ヤブと名医を分けます。
重要な点は漢方医学の治療方針ではなく、その人だけの治療方針を考えたかどうか。
だから体質別なんですね。
マニュアル的に考えてしまうと「不妊症」は○○の治療方針で治すって具合になりますが、そうではありません。
患者さん自身に対する治療方針です。
AさんもBさんもCさんも、みんな不妊症だったとしても、治療方針はAさん用、Bさん用、Cさん用とみんな変わってきます。
漢方の名医として最も重要な点は、治した数が多いことではありません。(もちろん治した実績は必要ですが)
漢方医が自分のしようとしている治療を理解しているかどうかです。
マニュアル的に病名や症状をあてはめて処方なんて論外!
処方したけれど、どんな症状がどう変わっていくと見ているのか、今後、どう変化すればどう治療していこうと考えているのか、それがない漢方医はヤブですね。
僕は、名医ではありませんが、そういった漢方医学独特の特徴に沿って治療をしています。
当然、初回に体質を分析し、それを説明します。
合わせる漢方薬はその体質に対して、どんな調整を行うのかを説明します。
そして、推測と違った場合は、どう対処していくかを説明します。
だから不妊症の治療では、来月はここで排卵日が来るとか、月経はちょっと早まってここで来るかもとかお話することもあります。別に当てものではないですが当たった時は驚かれます。まー当たった時は・・・。
漢方薬を飲む前には「この症状とこの症状がこんな風に変わってくれば、良い方向に進んでいますよ。でもこうなったら、合ってないかもしれないので、連絡ください」とお話しています。
漢方の治療で重要なのは、いろいろな知識を知っている事ではありません。
漢方医が、
★自分のやろうとしていることをわかっているか?
★未来が予測できているか?
ですね。
本の書いてある理屈は、その先生自身の治療方針ではありませんよ。
今、漢方薬を飲んでいてもなかなか好転しないと悩んでいる方。
「体質はどう捉えているのか?」
「それがどう変わると推測しているのか?」
「今後、どういう方針をたてているのか?」
今の先生に聞いてみてください。
漢方薬を処方したのなら、説明できないとおかしいので。