これ、一般の人は、そう思っても、しょうがないと思うのですが、漢方を東洋医学理論として理解していない先生なんかも誤解していたりします。
一般にドラッグなどに売っている痛み止めなどのお薬と病院の同じような痛み止めのお薬の違いって何かご存知ですか?
全てがそうというわけじゃないですが、大体は成分濃度の違いです。
要するに病院のは濃度が濃いだけ。
人工的に作り出した新薬は、成分の濃度が濃くなるほど、作用が強くなります。
ここで、もう一つ、勘違いしてはいけないのは「良くなる効果」が強くなるわけじゃないですよ。
「作用」が強くなるのです。
例えば花粉症の鼻水を抑えてくれる薬の濃度が強いということは、鼻水を抑える力も強いですが、同じように眠くなったりボーッとしたりする症状も強くなったり、長く続いたりするということです。
作用とはそんなものですが、処方する医者側でも「濃度が強ければ治る」と単純に考えている場合があります。
中には、その西洋医学の化学的な考え方を勝手に漢方薬にあてはめている先生もいます。
もちろん、漢方では濃度が「濃い=作用が強い」になるとは限りません。
漢方薬は生薬でできています。
そして、その生薬は食べ物の延長線上にあるものです。
例えば、砂糖は脳の活動や筋肉の活動のエネルギー源になります。
それでは、この砂糖は、たくさんの量をとれば、とるほど身体は元気になると思います?
答えは・・・余計に疲れます。
体内の砂糖の濃度をどんどん濃くしても、膵臓が疲れ、血液が粘るだけです。
そして、漢方的には砂糖にも副作用がありますので、その副作用である「吐き気」が出てきます。
こういった食べ物と同じように漢方薬も2倍量飲んだりしても効果が高くなるわけじゃありません。
まず漢方薬の種類自体が体質と合っているかどうかという問題があります。
漢方は体質と合っていない漢方薬を飲むと副作用になる場合があるので、量を増やすということは、副作用を増やす、強めるということにもつながりかねません。
病院のお薬は、体質がどうであろうと、薬の成分の力で強制的に身体の働きを変えて治ったということにしますが、漢方の場合は飲む人の自然治癒力が発揮できるよう、漢方薬がお手伝いするのです。
漢方薬が無理矢理、身体の働きを変えて治そうとするわけじゃありません。
漢方薬を体質に合わせて飲まないといけないのは、この働きゆえですね。
身体のバランスを調整していく力やペースには個人差があります。
スポーツをしていて病気知らずの人は、回復させる力が強いです。
逆に大病を長い間、患っているおばあちゃんは、回復させる力が弱いです。
人それぞれの治ろうとする力の違いがあるのですね。
だから、分量も適量があります。
早く治したいからといっても、身体の回復力は早まらないのです。
病院のお薬の場合は、体質に関係なく「強制的に変化」させるので量を増やせば増やすほど、作用が強くなっていきますが、漢方の場合は、漢方薬の分量を増やしても、体質の調整する力は増えません。
だから、倍量にしたからといって2倍、速く治るわけでもないし、
2倍、効くわけでもないのですね。
それどころか、僕の治療経験では、少ない量にしたほうが劇的に効いたことが多かったです。
要は、東洋医学の大原則。
バランスなんですね。
あまり、あせって効果を期待しすぎてもいけない。
でも、1ヶ月も2ヶ月も経って、何も効果を感じないのであれば、それは体質や漢方薬の種類を考え直さないといけません。
漢方治療する場合は、あせらず、しかし着実に少しでも進んでいけるようにすることが大事だと思っています。