2013年10月31日

漢方薬は症状ではなく体質にあわせます。

漢方は体質に合わせるもの。
全く漢方薬を知らない人でもそれはなんとなく聞いたことありますよね。

でもその体質って具体的に何?

体質というのは、その人の現在の身体の状態のことです。
この中にはもって生まれた遺伝的な体質も含まれます。

もうちょっと、掘り下げてみましょう。

その人の体質を知る手がかりになるものは、その人の体格、歩き方、話し方、住んでいる環境、考え方、仕事を含めた生活リズム、食事、過去のその人の病気、肉親の病気、症状などです。

これらを漢方診断フィルターにかけて、アレやコレやと総合的に分析し現在の体質をいうものを割り出します。

ここでとんでもない間違いを犯す人がいます。

それは症状だけ聞いて漢方薬を処方すること。
症状は体質を知る手がかりの1つですが、症状だけで体質を知る事ができないのです。

この間抜けな方法を更に発展させヒドイ人になると、症状や病名ごとに漢方薬を処方します。

そうなると1日に数種類の漢方薬を飲む事になるのですね。

1種類の漢方薬の中には数種類の生薬が含まれています。
例えば耳鳴りなどに使うことのある桂枝加竜骨牡蠣湯。
この漢方薬には桂枝、芍薬、大棗、甘草、生姜、竜骨、牡蠣という7種類の生薬が含まれています。

生薬はそれぞれ働きが違いますが、互いに協力しあったりして1つのチームとして耳鳴りを「治すぞー!」と一致団結しているのですね。

それぞれ働きの違う生薬がバランスのとれた働きをすることが漢方薬の不思議さというか絶妙なところなんです。正に桂枝加竜骨牡蠣湯というチームですね。

例えば、この耳鳴りの方に便秘があったとします。

さっきの症状ごとに漢方薬をあわせる人は、全体の体質を考えないので「じゃあ、便秘に大黄牡丹皮湯!」と処方したとします。

そうすると大黄牡丹皮湯の中の生薬(芒硝、冬瓜子、牡丹皮、桃仁、大黄)という5種類のものが増えることになります。

こんな調子で頭痛もあるから五苓散とか冷えもあるから人参湯なんてやってたら、膨大な生薬の数を飲む事になります。

「でも、たくさんの効果のある生薬を飲めば治りやすいんじゃないの?」

大は小を兼ねそうですよね。問題はお金だけかに見えますが・・・。
漢方医学的に大きな問題なんですね。

もちろん総合的に体質を判断しないで、症状ごとに漢方薬を合わせることが問題ですが、それだけではありません。

漢方薬の生薬構成というのは、絶妙なバランスで成り立っています。
長い歴史の中で治療薬として使われ、このバランスが良い!とされているのです。

それに生薬構成は少ないほどシャープに効きます。
生薬数が少ない漢方薬ほど、治せる範囲が狭くなりますが効果がシャープになり、生薬数が多くなるほど治せる範囲が広がり効果がボヤけてしまうのです。

それに漢方薬同士の相性というものもあるのですね。

例えば桂枝湯と葛根湯を合わせたり同時期に一緒に飲むことはありません。
非常に無駄な組み合わせだからです。
桂枝湯に麻黄、葛根という生薬を加えれば葛根湯になります。
だから桂枝、芍薬、大棗、甘草、生姜は被ってしまうのですね。

漢方薬同士の相性などを考えないで症状ごとに漢方薬を処方してしまうとこういった無駄なダブりが起こってしまいます。葛根湯チームと桂枝湯チームは協力し合える関係ではないのです。

無駄になるだけならいいですが、見方を変えれば被っている生薬は倍量になるので効果も本来のものとどう変わってしまうのかわからないのですね。

生薬達は互いに、ある生薬の働きを補助したり、ある生薬の強すぎる働きを抑えたりして1つの漢方薬としてバランスを保っているのです。
このバランスは2千年間、ほぼ変わらないのです。

だから同時期に複数の漢方薬を使う場合は、相性が悪くないか、症状や病気ごとではなく、全ての状態を分析して体質に対して漢方薬を合わせているかを慎重に考える必要があります。
大体、たくさんの生薬で治るのなら、全部の生薬を加えたスーパー漢方薬をつくればなんでも治せるはずですから。何百種類も漢方薬いりませんッ!

漢方薬はそれぞれの生薬1つずつの効果で治すのではなくチームとして働きますので、チームの性格を無視したら、全然治してくれません。
そこが西洋薬と全く違うところですね。


posted by 華陀 at 19:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 漢方薬の中味について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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