漢方薬をあまり知らない人でも小青龍湯なら知っているかもしれません。
花粉症の時期になると近くの耳鼻咽喉科にツムラの営業さんが小青龍湯の箱を山のように積み上げて持っていってるのを見かけます。
「あ〜あそこの耳鼻咽喉科は<花粉症、鼻炎=小青龍湯>ってモロにマニュアル漢方なんだな」と思いました。
それくらい、小青龍湯はマニュアル的に使われているので、有名になっているんじゃないかと思います。
ま、病院の漢方薬の変な使い方は、小青龍湯に限らないんですけどね。
それはさておき、僕は小青龍湯は、あまり好きではありません。
なぜなら、効き方が対症療法的だから。
なんか、飲んだら効くけど、効果の時間が切れたら症状が復活!みたいに感じるんですね。
いっつも1包飲んで鼻水が止まって、2時間後に復活し、その時点でやめています。
でも文句言いながら、毎年飲んじゃってますが・・・。
僕は急性でも漢方薬を使います。
漢方は急性の時は急性の時で2、3包で効いてくれますので。
だったら、飲んだら、鼻水が止まる小青龍湯は急性の鼻炎などで一時的に飲むのはいいんじゃないの?
と思われるかもしれませんが、なんというか、ほんと対症療法的なんです。
例えば、風邪に使う漢方薬は2、3包で効かせたりしますが、あくまで自然治癒力を助けて、飲み終わった後は自力の自然治癒力がUPして快方に向かっていくという、いかにも漢方的な感じがあるのですが、小青龍湯は新薬のように「飲んだら鼻水が止まって、薬効が切れたら元に戻って再発して」となんとも西洋医学のごまかし治療っぽい感じがあるのです。
ちょっとカッコつけて漢方的にいうと、治療効果が「浅すぎる感じ」
このことを真剣に漢方をされている先生達に話してみたら、その先生達も、「それはなんとなく感じていた」とおっしゃられました。
そこで、小青龍湯の中味の生薬構成から考えてみました。
小青龍湯は麻黄、桂枝、芍薬、半夏、細辛、五味子、乾姜、甘草となっています。
麻黄、桂枝、芍薬、甘草、乾姜までなら風邪でよく使う葛根湯や麻黄湯系統ともいえる組み合わせです。
厳密に言うと乾姜は使わずに生姜を使うことが多いですが。
(生姜を乾かしたものが乾姜です)
小青龍湯らしい生薬は残りの半夏、細辛、五味子。
これらは喉とか肺の痰飲をとりさるものです。
要するに、喉と肺あたりの余分な水分を取り除き、鼻水をなくしていく感じです。
生薬の組み合わせでなく小青龍湯全体の効果としては「表寒」といって身体の表面が冷えて、水が溜まっている人に合う漢方薬です。
(これは日本漢方的な効果です。同じ小青龍湯でも古方や中医学派の効果の考え方は変わってきます。)
そこから考えてみたら温熱と駆水が主たる目的で、先程の半夏、細辛、五味子は駆水に当たりますが、とりあえず喉肺の水を取り除くというのがメインの効果になっているのではないかと思いました。
通常、より深く効かせていこうと思ったら、もうちょっと麻黄の量が多かったり、身体のより深い部分の水を取り除く為に茯苓や白朮などの生薬もいるんじゃないかと思うのですが、喉と肺の水と取り除くために身体の浅い部分に効かすことに主軸をおいているからこそ、強く働きピタッと止まるけど、効果が切れたらダメみたいな感じになるのかなと思いました。
でもでも、だからこそ、「勉強はしないけど、漢方薬を使いたい」という医者受けがいいのかなとも思いますね。
だってお医者さん、飲んだら効いて、切れたら元通り再発って薬が大好きですから。
ただ、いろいろな文献を読んでて思ったのは、子供には再発せずに効くかもと考えました。
なぜなら、子供の体質は複雑ではないからです。
だから、鼻水に限らず、子供に使う漢方薬は得てして単純な処方の方がよく効きます。
身体の余分な水も大人ほど、変なところまで余分な水が溜まっていない体質だと思うので、パッととってあげれば治りやすいのかななんて思ったりします。
で、結論的にはやっぱり、小青龍湯は再発してもいいから、とりあえず2時間だけ鼻水ダラダラを止めたいという時はいいけれど、鼻水が2時間止まって、またダラダラ。
「鼻水が2時間止まって、またダラダラ」が嫌な人は、小青龍湯はあくまで補助としてメインは他の漢方薬にしたほうがいいんじゃないかと思ったりします。
ちなみにツムラの小青龍湯の場合は業界的に効果が薄いと専らの噂がありますので、頓服的に飲んで鼻水が止まるのかどうかは知りません。
この考察はあくまで効果の高そうな品質の生薬を使っている漢方薬の話です。
後、本当の漢方は西洋医学みたいに決まったガイドラインがなく、ある程度自由な発想での治療ができるものなので「こんな考え、間違っている」とか検討違いのコメントはやめてくださいね。
●鼻炎、鼻水、花粉症など、ご相談ご希望の方は、こちらのまごころ漢方の「無料漢方相談」から送信してください。
●お問い合わせなどは、こちらから送信してください。
【このブログの著者】
まごころ漢方薬店 国際中医師 松村直哉