これらは、僕の8年間の漢方相談の経験上、効かない漢方薬の部類に入ります。
効かないというか、漢方薬は、体質に合わせて選ぶので、実際に、「これらの漢方薬に合う体質の人がいない」と言えばいいでしょうか。
ところが、なぜかこれらは、病院でよく処方する漢方薬なのですね。
別に僕が医者嫌いだからといって、それに反発して病院で処方する漢方薬は効かないって言ってるわけではありません。
これにはちゃんと、理論的な理由があります。
そもそも、ほとんどの病院は患者さんの東洋医学的な体質を見ずにマニュアルで漢方薬を処方していることが多いので、どの漢方薬を処方しようが効かないほうが多いと思います。
そういう話しではなく、長らく漢方に携わってきたけれど、なぜか、これらの処方って本に書いてあるような反応を引き起こさない感じがあるのです。
特に不思議なのは、不妊症に当帰芍薬散です。
これは漢方のどの本にも不妊症にはよく使うとあります。
ま、これも、古典などから厳密にみていくと、不妊症というよりも「妊娠した後の安胎に使うべし」的に書いてあるのですが。
でも、遠からず不妊症には使うものだと理解していました。
しかし現場でいろいろな人の体質を分析していると当帰芍薬散を使う体質の人が出てこないのです。
さっきもお話しましたが、あえて避けているわけではありません。
うちの場合は、不妊症なら当帰芍薬散とか、温経湯など病院がやってるようなメーカーから貰ったマニュアルを見て処方せずに全身の症状をお聞きして、東洋医学的な体質を判断して、それに合った漢方薬をお選びします。
単純に純粋に体質に漢方薬を選んでいます。
不妊症に当帰芍薬散みたいな情報は僕も知っているのですが、不妊症という病態的なものでなく、純粋に、その人の体質でみていくと当帰芍薬散にあてはまる人が出て来ないのです。
ちなみに温経湯に当てはまる人もいません。
どちらも年に3人ほど適応の人がいれば多い方ですね。
それくらい当てはまる人がいません。
しかし、にきびや腰痛などでは当帰芍薬散を使ったりはします。
それらも「純粋に体質だけをみていったら、そうなった」という感じです。
僕がみている体質の中で不妊症の人に、なぜ当帰芍薬散の合う体質の人がいないのか謎です。
ただ、ただ、純粋に体質をみていたら、そんな人がいないと言う感じです。
大昔の処方ですから、やはり不妊症の治療ではなく安胎が目的なんでしょうか。
当帰芍薬散は温補、補血、利水の処方です。
温補は温める役割、補血は血を補う役割、利水は水の巡りを整える役割。
温補、補血なんて不妊で悩んでいる人なら、必要そうですが、当帰芍薬散には「気」系を整える部分がありません。
だから、ひょっとしたら現代は「気→女性ホルモンバランス」などが強く関わっているので、当帰芍薬散の体質がいないのかもしれませんね。
補中益気湯なんて6年間の中で使ったのは2人だけ。
しかも1人は脱肛。
補中益気湯は虚証と虚熱の方に使うものです。
ざっくりとしたイメージで言えば、お年寄りのばあちゃんで体力がすごく衰えていて疲れたり、夕方になったら微熱が出るようなタイプです。
いわば老人ヨリの処方です。
補中益気湯は効かないとはいいませんが、なんか効き方が穏やかなドリンク剤的な感じがします。
補中益気湯は中国の元の時代に病気に対抗するには、脾胃(消化器全般)を補うことが肝要であると考えた李こうが創薬したものです。
漢方薬の基本理念は全身のアンバランスを整えるものというバランス調整理論が基礎となっているので、こういった病院の薬効的な、体質を考慮しない効果を全面に出している偏った作り方が、効かない影響なのかもしれません。
理論倒れ感がハンパないです。
根本的な治療感がないのですね。
「疲れはとれるけど、また戻る」みたいな。
麦門冬湯、これも理論倒れな感じです。
感単に言えば老人の咳に使います。
咳だったら→麦門冬湯と単純に出してる人はちょっとヤバイと思います。
漢方的に厳密にみたら上焦の燥証、気の上衝、虚証という証の組み合わせの体質に合います。
合うと書きましたが、僕は麦門冬湯を効かせた例は8年間で1例のみ。
その方は肺炎の方で3日後に劇的に治りましたが、それっきり麦門冬湯の適応の方は現れていません。
時々、激しい喉の乾燥と人に使ったりしましたが、見事に効きませんでした。
それっくらい使いません。
うちの相談で老人が少ないというのも関係しているのかもしれません。
通常、咳は急性が多く、急性で咳が起こった場合の大半は漢方では上焦の熱証になります。
上焦の燥証とは熱証が更に深刻になったケースです。
漢方ではより深くなったと考えるのですが、虚実などの体力的観点から熱証が燥証までいくのは元々、乾燥感を持ちやすい老人か、長期間の咳だと思うのです。
なので、証の構成バランスから見ると非常に中途半端な処方に見えます。
そして、消風散。
アトピーに消風散と言われる位のものです。
逆にアトピー以外に何か使えるの?って聞きたいくらい。
漢方薬は同病異治、異病同治といって、同じ種類の病気も違う種類の漢方薬で治るし、違う種類の病気も同じ種類の漢方薬で治るという原則があります。
要するに「漢方は体質をみるのであって、病名でみるのではないよ」ということですね。
この漢方の★原則★は病院にとっては耳が痛いんじゃないですか。
という原則からすると「アトピー=消風散」というのは病院の薬感覚ですよね。
漢方的には上焦の熱証と燥証という適応体質がありますが、応用範囲がなく、使うのはアトピーのみです。
そういう意味では、非常に漢方薬らしからぬ処方です。
そして「汚らしい湿疹に使う」みたいな病院の病名漢方みたいな身もフタもない感じの説明なんですが、ちょっとひどい感じのアトピーの方に漢方初心者の頃に多数、試したことはありますが、1mmもよくなった試しがないので、僕の中では半ば封印気味ですね。
悪い意味で禁じ手。
そんなわけで、手前勝手な考えですが、補中益気湯、麦門冬湯、消風散、不妊症の当帰芍薬散は効きません。
じゃあ、なぜ、病院では使われるのか?
それは病院は体質を一切、みないからじゃないでしょうか。
それに誰にでも効きそうな平均値をとれば、こういったわかりやすい処方になるのかもしれません。
でも漢方薬は平均的な考えは通用しないと思います。
あくまでお一人、お一人の状態や状況に合わさないとダメです。
漢方では誰にでも効きそうなものは、誰にも効かないのです
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【このブログの著者】
まごころ漢方薬店 国際中医師 松村直哉