感染症は、いろいろな症状を引き起こしますが、原因は全てウィルスや菌という1つの原因に集約されます。
菌やウィルスがなくなれば、頭痛や発熱、下痢などは、全てなくなります。
外科的なものも、症状の発端となった身体の器質的な原因があります。
骨折や腫瘍ができているなどです。
症状と原因の関係ははっきりとしていて、その原因を手術なりで取り除けば治ります。
急性的な症状は原因がわからなくても、病院の薬の強い作用で一時的にでも変えてあげれば、すぐに治ります。
急激になったものは、急激に治せるのですね。
これも症状の起こる原因が単純だったりするからです。
問題は慢性病です。
どれくらいから慢性かというのは病態別に変わってくると思いますが、病院の治療から逆算して考えてみましょう。
病院の薬は対症療法といって、飲んだその場、その場で効いて、何時間かして薬効成分が身体からなくなれば、再び病気の状態に戻るので、飲み続けたからといって、だんだんと治っていくものではありません。
なので、そういった病院の薬独特の性質から2週間も飲んだり塗ったりを続けても、やめた時に2週間前に戻っていれば、後はいくら飲んだり塗ったりしても、同じことの繰り返しだと思います。
これは、よくアトピーの方の治療の話しでさせてもらっています。
ステロイドは炎症を強力に止めるものですが、薬効時間が切れれば、元の状態に戻ります。
塗れば、炎症がなくなって、薬効が切れれば、また元の状態に戻って・・・
理屈からみれば、長期間、使うことによって、だんだんと治っていく道理はありません。
(最近、ステロイドの長期連用でよくなる臨床例などが紹介されていますが、生理学、薬理学的に長期連用で何がどう変わって慢性湿疹が治るのかは一切解明されていません。つまり大して証拠がないということ)
毎度、同じことを繰り返していくだけです。
つまり、症状や病気がある程度、長く続いて慢性状態に突入すると、その場の薬効で治療しようとする対症療法の薬は適正な治療ではなくなってくるのではないかと考えられます。
だったら、慢性病の原因は何でしょうか?
最初の出だしは1つの原因だったかもしれません。
でも、症状が治らずに続くうちに他の身体の部分なども病的状態に陥っていきます。
慢性病になると原因1つでは語れません。
いろいろな要素が全部、原因として存在しているのです。
西洋医学の治療の基本は因果関係のない1つの病的状態に対して1つの治療なので、複数の病的状態になると実質、治療できません。
そのいろいろな病気の原因は何かというと、あなたを取り巻く全てです。
住んでいる環境や食事、睡眠、運動、ストレスなど、その人を取り巻く全ての要素の中に病気になってしまう原因があるのです。
だから、元の健康な状態に戻そうと思ったら、生活習慣なども変えていく必要があります。
「できたら生活を変えたほうがいいかも」ではなく、漢方では生活を変えていくことも治療の1つになるのですね。
漢方薬が得意なのは、慢性病の治療です。
なぜなら、漢方薬は身体全体を整えて、体全体のバランスを整えるからです。
慢性病は病的な状態が身体全体に散らばっているので、1つ1つの症状に薬を対応させても治せません。全体でバランスをとっていかないといけないのです。
それにプラス、もう一つの治療「養生」ですね。
生活習慣を病気にならない状態に整えていくことです。
この時に難しいのが、習慣を変えて行く事。
今のある習慣が身体にとってダメなことは皆さん、十分に分かっているのでね。
だから習慣なんです。
でも、その習慣をやめないと治療は片手落ちです。
根本的に治ろうと思ったら、身体のバランスを整える漢方薬と原因になっている生活習慣を整える養生の2つの治療を揃えることが必要ですから。
でも、習慣なんてなかなか変えられません。
僕の立場上、理想論を理論的にぶちかまして「生活をちゃんとしなくちゃ治らないよ」と言うのは簡単。それで変われば誰も苦労しませんよね。
しかし、自分もそうですが、言われて簡単に「ハイハイ」と変えられるものではありません。
漢方治療の難しさはここにあるのかもしれません。
厳しく指導するべきか、嫌なら「今までの感じで良いよ」と流すべきか・・・
僕自身もあんまりルールに縛られるのは嫌いなので、これは漢方治療の永遠のテーマですね。
今、うちで実践しているのは、どちらでもありません。
要は養生という治療も、どう取り組んで行くのか、話し合うといった感じ。
だから人によって、取り組み方がみんな違います。
漢方は人それぞれの体質に合わせるものだから、養生もそんな感じでいいんじゃないかと思います。
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【このブログの著者】
まごころ漢方薬店 国際中医師 松村直哉