怒るどころか、うちに来られている方々がテレビの「漢方番組」を見て「笑える」と感じてもらえるのが嬉しいですね。
いつもマニアックに漢方の話をしているのが報われているように思います。
これからも「西洋医学風なんちゃって漢方」ではなく正統派で「伝統的な自然治療としての漢方」を伝えていけたらと思います。
それはさておき、医者も使ってるスーパー漢方薬という紹介があったようで、テレビの漢方ネタから記事をすすめていきたいと思います。
漢方薬の中には特に効果が期待できる漢方薬がある。という紹介だったらしいですね。
(僕はテレビ見ないので内容は知りません)
その効果が期待できる漢方薬というのが、葛根湯、芍薬甘草湯、五苓散、加味逍遥散らしいです。
そもそも、漢方薬は500種類以上あって、どれも体質と漢方薬が合えば効果が期待できるのですが、医者は体質を診断できないので、テキトーに使っていても効果がありそうなものをわざわざ、ピックアップしているのでしょう。」
この中で、なぜ、加味逍遥散なのか?という疑問はありますが、確かにどれも太陽病期(加味逍遥散以外)といって病気や症状の急性期に使うもので、特に効果があるというよりは、急性の症状で症状が単一でわかりやすい時に使うと「あっ効いた!」と確認しやすい漢方薬ですね。
ピックアップの漢方薬は、太陽病期や陽明病期という急性期に使うので、どちらかというと西洋医学の対症療法的な使い方をすることが多い漢方薬群です。
やっぱり、医者って対症療法が好きなんですね。
この中で加味逍遥散だけは全くこの中での共通項(東洋医学理論的に)がないので、加味逍遥散を効果が高いっていうんなら、他の漢方薬全種類を入れろよって思うのですが、多分、ウツとか、更年期とかの漢方薬として、医者の間で今、加味逍遥散が流行ってるんでしょう。
ツムラの勉強会とかで知って、単純にそれで使い出したみたいなパターンって病院って多いので。
ちなみにここにある葛根湯ですが、漢方の世界では葛根湯医者という言葉があり、これはヤブ医者の代名詞です。大根役者みたいな感じですね。
その昔、葛根湯は肩こりのある風邪によく使うところから、肩こりに使ったり、その他諸々に使ったりと葛根湯しか使わない医者が出てきて、葛根湯しか使えない医者=ヤブ医者となりました。
実は葛根湯は実際にいろいろな体質に使えるのですが、どれも太陽病期(急性期)に使用するというのが前提条件です。
太陽病期に使う漢方薬というのは、葛根湯に限らずどれも薬性が強いです。(効果が高いのではない)
もしかしたら、テレビでは強い変化をあたえやすいから「特に効果がある」ということと勘違いしているのかもしれません。「変化」には悪い変化もありますから、体質と合っていなければ「特に効果(悪い変化)がある」とも言えます。
漢方の絶対法則は陰陽なので、体質との適合で特に「良い変化」と同じ幅だけ「悪い変化」もあるということですね。
なので、テレビを鵜呑みにして勝手に使わないほうがいいですよ。
うちの嫁さんなんて、ある症状を治す(テレビで紹介してたような使い方でない)のに五苓散を使ったら、次の日、まる1日、歩けなくなりましたから。
ちなみに店では、そんな激烈な使い方はしません。
もっと、もっと慎重に検討しますが、漢方屋の家族は患者さんの前の実験を経験しないといけない運命でもあるのでで・・・いつも僕の勉強のためにゴメン!
葛根湯からそれちゃいましたが、葛根湯にしても薬性が強いから変化がわかりやすいともいえるのですが、例えば葛根湯は蕁麻疹にも使います。
この時に慢性系の蕁麻疹や葛根湯に適合する体質でないのに葛根湯を使うと・・・
蕁麻疹が爆発します!!
これを世間では、めんげんとか、好転反応とか言って説明しますが、急性期でない蕁麻疹に葛根湯を使って、爆発するのはめんげんども好転反応ではもありません。
ただの誤治(体質を見誤った治療)です。
めんげんとか、好転反応なんて、滅多にありません。
ほぼないと言ってもいいくらい。
漢方薬を飲み始めて、なんか強い悪い症状が出たら、まず誤治ったんだなと思っても差し支えないです。
悪い症状が出てるのに、次の対処や漢方薬を考えずに「めんげん」「好転反応」とか言ってたら、「あーこいつ、漢方知らないわ!」って思ってもらてもいいと思います。
僕は、急性でない慢性病で葛根湯を使ったことがあります。
それはフレグモーネ(蜂窩織炎)っていうちょっと難儀な病気。
主に手足に炎症化膿を起こして、腫れたり、皮膚などが破壊されたりする病気なのですが、これの治療を始めた初めの2週間だけ、葛根湯を使いました。
治療のきっかけや変化をつかむために、あえて強い薬性の葛根湯を使いました。
もちろん、太陽病期の葛根湯は長く飲む性質ではないので、体を変化させるきっかけをつかんだら、すぐに次の漢方薬に変更しましたが。
こういう話を書くと、フレグモーネに葛根湯が効く。みたいな西洋医学風なんちゃって漢方の先生が大好きな病名漢方(東洋医学理的体質を見ないで病名だけで漢方薬を処方する)で処方しようとしますが、慢性のフレグモーネで体質も見ないで誤治ったら、目もあてられない惨状になると思います。
急性で使える漢方薬は変化がわかりやすいので、単純に効果として感じやすいですが、一気に悪くなる可能性も孕んでいるということです。
それが「陰陽」を絶対法則とする東洋医学(漢方)ですね。
どちらかというと漢方の得意な部分は慢性病の治療です。
慢性病の治療は、いろいろな部分のバランスをとっていくので、1つ1つの症状の変化はわかりにくくなりますが、そちらの方が安全でより根本的に治してくれる漢方らしいものです。
なので、僕は、今回の太陽病期の漢方薬よりも、慢性期に使う中間辺りの漢方薬が好きですね。
今回の太陽病期の漢方薬を自分の判断、もしくは漢方理論をわかっていなくて東洋医学的な体質を見ずに長期間続ける場合は、くれぐれもご注意あれ。
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【このブログの著者】
まごころ漢方薬店 国際中医師 松村直哉