一般的には普通の宣伝なのでしょうけれど・・・
それは当帰芍薬散を錠剤にしたものです。
商品自体は別におかしくないのですが、気にかかったのは宣伝の方法。
冷え症を改善する漢方処方として「加味逍遥散」「桂枝茯苓丸」「当帰芍薬散」「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」を4つ紹介していて、その中の「当帰芍薬散」を勝手にW日本人女性に多いタイプWに合う漢方薬とし「日本人女性の冷えに効くのが当帰芍薬散なんだから、これ飲みなよ」って宣伝してるのです。
この広告には笑ってしまいました。
要はよくあるやつですね。
製薬会社がセルフでポンポン売りたいから、本音では「体質でいちいち選んでられるかよ。安くするから、なんも考えずに買っとけ!!」って商品なんでしょうが、広告の構成が真剣に漢方をやっているお店にとって迷惑というか有害だなと思って。
宣伝構成のヘンテコなところは、はじめに4つの処方を出しているところですよね。
「冷え症のタイプに4つの処方だけって少なすぎる」というのは置いといて、漢方は体質ごとに選ぶんだよ。と言ってるところ。
ハナから体質なんて分析する気もないのに、勝手に「4つのタイプ」にわけているところが、あざとく金儲け主義なんだなと思います。
ちなみにしれっと「漢方では冷え症は4つのタイプがあります」みたいにやってるけど、
うちでは冷え性の人には、最低でも以下の漢方薬が必要なタイプがいると考えてます。
当帰四逆湯、乾姜附子湯、人参湯、桂枝人参湯、呉莱東湯、大建中湯、帰牌湯、加美帰牌湯、桂萎薬草貰辛附湯、苓甘萎昧辛夏仁湯、真武湯、温附湯、甘草乾姜湯、五積散、苓姜朮甘湯、四逆散、桂枝湯、参苓白朮散、小建中湯、加味遁造散、四君子湯、補中益気湯、八味丸、牛車腎気丸、当帰四逆加呉莱頁生萎湯、桂枝夜苓丸、温経湯、当帰有薬散、四物湯、十全大補湯、ざっとで30種類。
ベタな感じでこれくらい。まだまだありますが・・・。
そう、漢方が西洋医学と違うところは、ココなんです。
漢方薬は一人一人に合わせる。というか、合わせないと意味がない。
「なんで漢方って2千年も経ってるのに未だに数百種類も漢方薬があるの?」って話ですよ。
漢方薬をセルフで売りたいがために言ってる「大半の日本人女性の冷えには当帰芍薬散だから」という理屈が通るなら、冷えに使う薬は「冷え=当帰芍薬散」だけになっていて、現代に当帰芍薬散しか伝わっていないはずです。
他の漢方薬はなくなってると思います。
でも、実際は、今も数百種類の漢方薬が伝わり残っています。
それは2千年前だろうが、現代だろうが、やっぱり、漢方薬は一人ずつの体質を判断してその一人のための漢方薬を選ばないといけないからです。
いいかげんな漢方薬メーカーの宣伝や医者のように「当帰芍薬散が合う人が多そうだから体質を見なくても当帰芍薬散を飲んでればいいよ」なんて理屈は漢方理論には1文字もありません。
平均的に多いタイプの体質に合う薬を飲むって、それって、まんま西洋医学ですやん!
西洋医学は一人一人に合わせませんよね。
ジュクジュクのアトピーだろうが、乾燥で血だらけのアトピーだろうが「日本人のアトピーに多いタイプに合う、お薬はステロイド!!」という平均的な考え方。
それがいいとか悪いじゃなくって、西洋医学の薬は、例えば山本さんとか、個人に効く薬じゃなく、日本人ですらなく、”人類というタイプ”に合わせたお薬です。
漢方薬を飲みたいって思っている人って、西洋医学の薬が嫌だなぁ〜って思う人が多いと思うのですが、その人がこんなノリで漢方薬を飲んだって、根本が間違ってるから漢方薬を飲む意味がないですね。
製薬会社がつくった漢方薬はやっぱり西洋医学の薬でした。
それをみてふと、思ったのは、逆に体質をみないで誰でも、それこそ日本人だったら誰でも飲んでもいい漢方薬ってあるのだろうかと。
ぱっと考えれば、答えはノー!ないです。
その人の体質に合わせるのが漢方薬だから。
例えばさっきの冷えに使う漢方薬を4つ出していましたが、桂枝茯苓丸の合うタイプと当帰芍薬散の合うタイプはざっくり簡単に現すと体質が正反対です。
つまり、もし当帰芍薬散が合う冷え症だったら桂枝茯苓丸を飲んじゃいけないし、桂枝茯苓丸が合う冷え症だったら当帰芍薬散を飲んではいけません。
どちらも副作用が出ます。
ただ漢方薬の副作用って弱くて目立たずにじわじわと続いていく場合もあるので、処方した人間が気づかなければ、なかったことにしようと思ったらできるのです。
でも、その積み重ねは年月とともに大変な副作用に繋がっていきますが・・・。
そういった感じで、誰でも合う漢方薬となると難しいですね。
漢方の世界では「誰にでも合うものは誰にも効果がないもの」です。
良いも悪いも大きな変化を与えるから副作用も効果があるのです。
「誰かにすごく効くものは、他人には、すごく悪いもの」なのです。
だって、結局、漢方薬は「誰にでも合うものは誰にも効果がないもの」だから。
僕は病気ではないですが、それこど体調を整えるために毎日、漢方薬を飲んでいますが、短かったら3日。長くても2週間ごとに、その時の体質を自分でみて漢方薬の種類を変えていってます。
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【このブログの著者】
まごころ漢方薬店 国際中医師 松村直哉
冷え性に効く漢方について色々と調べていたのですが、
製薬会社さんの広告はやはり売るためのものだったんですね…。
冷え性には○つのタイプがある!みたいな文言は、正直今回調べている中でよく見かけました。
ですが本当はもっと沢山のタイプに分かれているどころか、
その人に効く漢方はその人その人によって違うんですね。
確かに、言われてみれば、そうでないと沢山種類がある意味がありませんもんね(笑)
すごく勉強になりました〜。
「誰にでも合うものは誰にも効果がないもの」、肝に命じておこうと思います;
本当にとても参考になる記事を、ありがとうございました。
ほとんどの漢方薬の紹介が、買ってもらうためのキャッチコピーみたなものになっていますので、いっそ、治療のためと商売、体験のための漢方薬とジャンルを分けてほしいです。
日本人はA型が多く、几帳面で・・・というステレオタイプはやめてほしい。