西洋医学では生活養生は治療とは別で、できればやったほうが良い的なオプションっぽい位置付けのような感じがありますが、漢方では完全に治療の一部です。
漢方薬を飲んでの治療と養生は同等だと思っていただいていも差し支えありません。
逆に言えば、単に漢方薬だけを飲んでいて自分の体質に合った生活養生を行っていない場合、それは漢方治療とはいえません。
病態によっては絶対に取り組まないといけないこともあります。
西洋医学の治療のほとんどは、本来、身体の中のシステムにはない外的かつ人工的な薬の成分で痛みを止めたり、かゆみを止めたりします。
その場や一定の時間だけ、外的な力で症状を無理やり止めたり無くしたりするので、姑息療法と言われています。
西洋医学は、こういった性質なので、根本的に治療したり、根本的な原因を考える術がありません。
西洋医学が病気の根本的な原因のように説明しているのは、実は症状が起こっている時の体内のメカニズムを細かく詳しく説明しているのであって、病気になった根本的な原因がわかっているわけではありません。
例えば、アトピーは腸内免疫の免疫が関係しているとかいった話は腸内免疫の状態がアトピーの原因ではなく、アレルギー反応に関連する生理学的な説明を詳しく説明したにすぎません。
決して、その人自身がアトピーになった原因ではありません。
現在の体の中のことを単に説明しただけ。
人によって若干、異なってきますが本質的なアトピーの原因は食事の時間や食事の質だったり寝不足だったりするわけです。
慢性病の原因は、皆さんの生活の中にあるのですね。
以前にアトピーの方の治療をしている際に夜勤がある方だったので「睡眠不足や睡眠リズムの乱れは湿疹が治らない決定的な原因にはなります」とお話しました。
もちろん、だから治らないという意味ではなく、漢方薬はステロイドのように湿疹を無理やり一定時間無くすものではないので「夜勤による睡眠リズムや睡眠不足の乱れをなるべく調整するようにしていかないと漢方薬の効果だけで治るわけではありませんよ」と言う意味でお話したのですが、どうも漢方薬を飲み続けていれば、生活は変えなくても、そのうち治ると思っておられたようです。
漢方薬は病院の薬と違って、長期間、副作用なく飲み続けることができる便利な薬みたいな位置づけに思われがちなんですが、残念ながら漢方薬の役割は、乱れた体質を元の健康な状態に近づけるよう調整することです。
だから、かゆみを止めたり、漢方薬を飲んでるだけで治っていきません。
バックアップ的に体内のシステムの調整は行ってくれますが、悪い要因は取り除かない限り、良くて一進一退になります。
例えば、漢方薬で血を補い、血の巡りを促進することによって傷口の修復を促進させることはできますが、その漢方薬を飲みながら、毎日、動き回って、その傷口が開いていたらどうなるでしょう。
漢方薬で体内から傷の修復を促進しながら、外部からは動き回ることによって傷は開くわけです。
これだったら、現状維持でも十分に良くなっていることになります。
傷口は見てわかるものなので「そんなの動き回ったら傷口が開いて治るわけないじゃん!」って誰もが思うでしょう。
でもアトピーの方の食事時間の乱れや甘いもの食べ過ぎ、コンビニ弁当などの便利で簡単な添加物食品の摂りすぎ、不妊症の方のタバコやお酒(男性に多い)は傷口が開いてしまうほどのわかりやすさがなく、なおかつ、便利であると余計に「自分にとって良いことと都合よく思い込みたい」ので、「実は悪いこと」を普通に毎日やってしまっているのです。
これでは養生になりません。
漢方治療は体質にあった漢方薬と体質にあった養生、2つで1つなので、普段の生活を病気の頃と変わらない状態ですごしていたら、半分良くなって、半分悪くなる。
現状維持なら、めちゃくちゃ治っていると考えないといけないかもしれないのです。
養生においてのもう一つ、大きな問題があります。
病院では「1日1万歩、歩くのが健康に良い」とか「毎日、緑黄色野菜を満遍なく30品目摂りましょう!」とか一般平均の健康論を養生的にアドバイスしていますが、養生も体質別で考えないといけません。
誰もが同じ養生なんてありえません。
普通で考えれば「何歳のどんな人だったら、どんな養生がいいのか?」皆んなバラバラになって当然です。
でも病院で個人ごとに養生のアドバイスなんてできません。
なぜなら、元々、診察の際にその人の体質を見ないで画一的な平均化された病気の病名で人を見るからです。
この見方は菌などを特定できる感染症では通用しますが、その他の病気には一切通用しないと思います。
その他の病気は、すべて個人差、体質差がかならずあるからです。
なので、菌系の感染症以外で病院から「普段はこうした方がいいよ」というのは一般論すぎるので、信用しないほうがいいと思います。
子供の養生、大人の養生、普段からスポーツしている人の養生、虚弱な女性の養生、病気ごとにも違うし、体質だって全然違うわけですよ。
それが「”人間”だったらみんな同じ養生でいいですよ」は、あまりに粗く乱暴ですね。
そんなわけないです。
一人、一人の養生考えるの邪魔くさいから「人間」くくりで、こんなものを食べたらいいとか、こんな運動をしたらいいとか、テンプレの養生を誰にでも同じことを言ってるのですよ。
病気を根本的に治そうと思ったら、結局、西洋医学であろうと東洋医学であろうと、一人一人と向き合って、その方だけの体質を理解し、その方だけの薬や養生が必要だと思います。
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【このブログの著者】
まごころ漢方薬店 国際中医師 松村直哉