2015年09月24日

患者さんに治療法?を選ばせる漢方薬局

この間、皮膚疾患でうちに来られた方から聞いた話です。

漢方薬局らしいのですが、早く治りたかったら5万円コースがあり、通常なら3万円コースらしいです。

前日に似たような話を漢方薬局を訪問している生薬メーカーの営業さんからも聞きました。

その先生は営業さんに向かって「お客さんには2つの商品を提示して選ばせたらいいんやで。それを勉強会で教えてもらったんや」と得意気に話していたようです。
勉強会で何やってんの・・・漢方の勉強じゃないんだ・・・

僕も昔は漢方相談などをしている薬局さんを営業先として訪問させていただいていたので、この種の話はよく聞きました。

ただ、十年以上も前の話なので、未だにそんな売り方をしているのかと逆に感心しました。薬業界、漢方業界は悪い意味で時間が止まっていますね。

そもそも、高いコースが治りが早いというのが「すごい!」です。

うちでは、当然、高かったら早く治してあげるとか、安かったら普通にしか治さない。という概念自体がありません。

病院の薬は強制的な効果が決まっていますので、決まった時間だけなら、ほぼ確実に効かせることができます。
だから、病院の薬であれば高いコースは早く治る。という提案もできるかもしれません。
ただし、ステロイドなどの新薬を使う場合は、ほぼ確実に効かせられるかもしれませんが、根本的には治らないし「一時的に治る→再発する」の繰り返しです。

じゃあ、漢方となると「こっちの処方だったら早く治るけど高い。
こっちの処方だったら安いので治るのに時間がかかる」なんてありえません。
しかも、この5万円コースの治療って漢方薬でなくて乳酸菌を使うらしいです。
サプリメントなんて漢方よりもはるかに医学レベルが低いのに、お金を高く払ってくれたら早く治すと言えることが単純にすごいなと思いました。

長年、漢方薬での治療に携わっていますが、病気を治すというのは、非常に難しいです。

人それぞれ、いろいろな環境やストレスがあって、症状や病名が他人と似ているように見えても、みんなそれぞれ、違う症状や病気です。

それを見極めて、患者さんとも何度も話し合って治療を進めていきます。

なので、うちで提案するものは、毎回、僕の全力です。
「高いお金を払ってくれたら早く治してあげる」なんて余裕が1mmもありません。

僕が提案するのは、あなたの今の体質にとっての一番のベストだと考えられるもの。
「ちょっと手を抜いた安いバージョン」と「早く治せる高いバージョン」なんて提案できる余裕がない。僕にとったら身体の治療ってそんなに甘くないです。

ましてや、それを患者さんに選ばせるなんて「自分は何のために漢方を勉強してきたんだー!」って感じになります。

なんかそういうのって治療じゃなくて完全な商売なような気がします。
商売だったら、高いものと安いものを同時に提示して選ばせるというのは昔からの常套手段ですから。

昔、うちに相談に来られたある方が
「いくらでも払うから、良いもの全部ください」と言ってこられたことがありますが「残念ながら漢方は医学理論的に、できるだけ、その人にとってベストの1つの処方に絞りこむのが良いので、種類を増やすことはできません」とお断りしたことがあります。
商売的にはもったいないですね。

でも漢方の治療はその人、その人の体質に合わせるものだから、みやみやたらと種類を増やして値段を高くすることは「治せない」ことに直結しているのです。これは漢方医学の原則でもあります。

もちろん、お店を維持していくのに商売的な側面も重要ですが、それよりも「治せない」というのは僕にとって最も恐ろしいことです。

それに漢方薬は何百種類とあるので、その何百種類の中から1つに絞り込んで治せた時の達成感は最高です。
このあたりは漢方マニアとしての快感かもしれません。

僕も早く治したり、普通に治したりと、あやつれるくらいになりたいです。
でも、これからも「全力で1日でも早く治せるかどうか」を地道に努力していくしかなさそうです。


posted by 華陀 at 17:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 漢方ってなんだろう? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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