2016年05月31日

薬を薬でかぶせて治そうするのは愚策じゃない!?(肝炎)

もともと、昔に、うちの患者さんだった人が、新たな相談で久しぶりに来られました。

以前に来られた時とは違う症状で、突然、肝臓の数値がものすごく上がったとのこと。

GOT、GPTが通常の8倍〜9倍に跳ね上がり、異様なだるさ、食欲不振、吐き気、ゲップ、胸の熱感や上半身ののぼせ感など。黄疸はありませんでしたが、かつてないほどの最悪状態。

年齢は30代前半の女性で、アルコールは一切飲まず、昔からの持病も一切なし。

普通で考えたら急性肝炎ですが、病院のエコーの診断結果を見たら「急性肝炎らしくない」との診断。
かといって「何」ということもなく、得意の不明という診断。

病院の治療はおきまりの「なんとなくウルソの投薬」
この辺のマニュアル治療はさすがですね。
勉強のエリートは絶対に一般的なマニュアルを外しません。

ウルソを飲み始めてから肝数値は、ほんの気持ち程度、下がったが、とにかく、異様なだるさ、吐き気、ゲップ、熱感などの自覚症状は1mmも変わらず。

検査数値も重要だとは思いますが、患者さんは「とにかく症状をとっておくれ」といった感じだったそうです。

その後、病院の「検査→ウルソ→検査」の繰り返しで「病院は詰んでるみたい・・・」と感じられたようで、一旦は近くの漢方薬局に相談に行かれたようです。

そこで処方されたのは「牛黄清心丸」
出たー!といった感じ。

漢方薬局と言いながら、牛黄清心丸と鹿茸でなんでも治ると思っているサプリメントノリの店ってあるんですね。

こういう店って、大体この2つにプラス田七などの血をサラサラにするものしか処方しません。
最近は更に腸をキレイにするものプラス!

どんな病気でも血をサラサラにする田七と牛黄清心丸みたいな。

漢方ってサプリじゃないですからー

牛黄清心丸といえば、思い出しますが、僕の西洋医学の師匠は上海人で、西洋医学はもちろんのこと、漢方のことも、よくご存知で、日本に来られた時に驚いたのが「なんで日本の薬局はどこも牛黄清心丸が山積みなの?」と言っておられました。

なぜ、そんな質問をされるかというと、牛黄清心丸って漢方の理論から言ったら、譫言、痙攣、高熱、病気で行ったら脳梗塞の直後みたいな時に使うものなのです。

その滅多に使わなさそうな処方が店に山積み!
師匠からしたら、日本はそんなヤバイ人があちこちに一杯いるのか?という素朴な疑問です。

でも、師匠、違うのです。
日本では勝手に「体力がつく」とか「元気になる」とかひどいのになったら「風邪がすぐに治る」みたいな漢方理論そっちのけで売ってるのです。

なので、今回の症状に効くはずもなく。
患者さん自身もその漢方薬局の説明に怪しさを感じたらしく、ほぼ飲まない状態で、うちに相談に来られました。

うちでは病院と関わり出してからの経緯を順に詳細に全部、聞きました。
そうすると、ある事情で一時期だけ、降圧剤をのみ、その後、ステロイド、不安感があるので、心療内科系の薬。その後も、やれ、吐き気にこの薬だ。食欲不振にこの薬だと。

薬のオンパレード。
時間経過と検査数値を並行してみていくと、どんどん、どんどん、肝臓が壊れている感じ。
そりゃ、肝数値も悪くなります。

一応、師匠に相談したら「薬は全部肝臓で処理するんだから、次々、薬を使ったら、肝臓がへばるに決まってるでしょ!生理学と薬理学の基本だよ!」

「はい、それはちゃんと理解し、おぼえています。師匠」
僕は漢方専門なので、一応、西洋医学の専門の師匠に確認しました。

で、トドメに牛黄清心丸。
漢方薬って、その人のその時の体質にも合わせる必要があるのですが、牛黄清心丸って、かなり強い負担を与える薬なんです。
その方は、虚証とよばれる体質なので、当然、そんなもの弱ってるところに放りこまれたらよけいに疲れます。

病名漢方のマニュアルからいくと、肝炎ってインチンコウ湯とか、大柴胡湯を使います。
肝臓に強く効かせる生薬が含まれる漢方薬を使用するのですね。

うちは、病名や症状ではなく、証(体全体の状態)をみて、漢方薬を選びますので、インチンコウ湯とか、大柴胡湯なんて選択肢は、弱っている虚証の患者さんに使うなんてありえません。
この辺の漢方薬を使ったら、更に悪化するのは目に見えています。
それは「証」が教えてくれています。

次に治療の方向性を考えていく上で、肝臓系のトラブルは柴胡剤とよばれるものを使うのがセオリーなのですが、治療の1段階としてやらないといけないのは「肝炎」を治すかどうかではなく「食事がまともに食べられるようにすること」

肝炎という「病気だけ」で見ると大柴胡湯とか患者さんの体力とか状況を一切無視したような処方をしかねません。
とにかく今は食べて、体力をつけるためには上焦(肩から上の部分)に熱がたまりすぎているので、それを降ろす必要があるため、上焦の熱をコントロールする漢方薬を選びました。

漢方薬名はあえて言いませんよ。
だって、この業界って、こういったブログを読むと「肝炎には○○の漢方薬がいいんだ!」とすぐに単純なマニュアルにしようとする人が多いので。(ちなみに同業や専門家は読まないでと注意していますが)

漢方薬を選ぶ時は「肝炎に○○の漢方薬」と直結で稚拙な選び方ではなく、「肝炎の□△の体質の人に○◇の漢方薬」を選ぶのです。漢方では肝炎の次に「□△な体質」という診断が必須なのです。

病名が同じ肝炎でも○○の体質だと選ぶ漢方薬も□△の体質の人の漢方薬とは種類が変わってくるのですね。
□とか△とか訳がわからなくなってきましたが。

その後、狙い通りに熱がひいて食欲が戻り、ゲップが少なくなり・・・と次々に落ち着いてきました。
もちろん、この時も漢方薬を渡すだけでなく、その人の体質に合わせた食事の摂り方をアドバイスしました。一般健康論でないやつね。

まとめ的には、具合が悪くなった時に体に負担を与える病院の薬を次々にかぶせて治そうとするのは、愚策ではないかと思う次第です。


posted by 華陀 at 18:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 病気を治す方法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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