2017年09月20日

ツムラが国民を欺いた「漢方」の大嘘Vol.1について

普段、雑誌、テレビなんか見ないのですが、患者さんから「先生、ツムラのあの保険適応の漢方薬の話って何なのですか?」なんて何人からも聞かれたので早速、雑誌を買いました。

週刊新潮 2017年09月14日号 40P〜
週刊新潮 2017年09月21日号 44P〜

正直、週刊新潮の「ツムラが国民を欺いた!!「漢方」の大嘘」という見出しを見た時、本来なら「そうだ!そうだ!それが真実だ!」と喜ぶところですが、なんか複雑でした。

なぜなら、僕は漢方を始めた当初から「医者は漢方のことは、ほぼ何も知らず、マニュアルでやっているだけ」と、このブログでも散々言い続けてきたからです。

僕が言い続けてきたと言っても「医者が西洋医学の病名や症状でマニュアル的に漢方薬を処方する」というのは、実は昔から真面目に漢方をやっている先生界隈では当たり前に知っていることでした。

医者に限らず、漢方薬局でも病名や症状だけを当てはめてマニュアル的に処方している先生の漢方を「病名漢方」「症状漢方」と呼び、こういう方法しかとれない先生の漢方のことを「なんちゃって漢方」と呼ぶのは僕ら的には半ば常識でした。

それどころか、昭和初期の昔の漢方の専門書籍の文中にも「病名漢方の誤治による弊害で・・・」なんて文も出てきたりで、昔からマニュアルでしかできない、どうしようもない先生というのはいるのだなと知っていました。

ちなみに「誤治とは誤った体質判断で間違った漢方薬を選ぶこと」ですが、西洋医学の病名や2、3の症状をあてはめて漢方薬を処方している医者や、なんちゃって漢方薬局は東洋医学的な体質判断すらしていないので、誤治にもならない、ある意味、無敵(気の毒な意味で)だと思います。

新潮の記事の内容を要約すると、一般の人は病院で漢方薬を処方してもらったら、誰でも「医者は、ちゃんと考えて処方してくれているだろう」と考えるかもしれないが、実は漢方のことなんて1mmも知らないでツムラから渡されたマニュアルをみるだけで処方していますよ。というもの。
(これって大げさな表現でなく本当に素人と医者に何の違いもありません)

それはレアケースではなく、そんな異常な状態にしたのはツムラであると。
ツムラは一時、倒産寸前までなりましたが、保険適応の漢方薬である医療用医薬品のシェアを獲得し、売り上げは回復します。

ツムラ復活の鍵になったのが、マニュアルだけで漢方薬が処方できるという方法です。
漢方の医学理論や漢方薬の薬学理論の知識を持たない医者でも簡単にマニュアルをみるだけで漢方薬を処方できるようにしたのです。

こんな方法は「歪んだ漢方」そのもので、ツムラ曰くはこの漢方を「日本独自に発展した漢方」と主張していて、北里大学にもツムラの宣伝が行き届いているのか、同じことをパンフレットに書いてあります。

本来、一人一人の体質に合わせる漢方薬を既製品化し、診断や処方の方法もマニュアル化し、それを日本独自と主張するとは嗤うしかない状態である。

というような内容で、この記事はゴシップでもなんでもなく、漢方という難しい分野をよく調べてあって問題の核心に切り込まれていると思います。

この記事のよいところは、ちゃんとツムラにもこの問題点について、細かく指摘した取材依頼書を送ったのですが、当のツムラからは<弊社は「自然と健康を科学する」という経営理念のもと、高品質な・・・」とパンフレットに書いてある宣伝文句の回答が送り返されただけらしいのです。

つまり、ツムラは逃げた → 書かれている問題点にしっかりした反論はできません。ということですよね。

この後は漢方薬の副作用のことが書いてあるのですが、これはVol.2にも書いてあるので、まとめてツッコンでみたいと思います。

さてさて、実は業界では昔から言われてきたことですが、実はこの問題って僕は漢方薬やツムラに限らない問題ではないかと思い、次の問題提起をしたいと思います。

そもそも、普通で考えれば、西洋医学と漢方は場所も時代も全く違うところで活躍している医学なのです。
なので、西洋医学の病名で漢方薬を処方する道理なんてありません。

では、なぜ、そんな意味不明な方法が医者にウケたのか?

実は僕もド素人で漢方を勉強したての頃は、体質診断なんて訳がわからないし、できないので、最初は西洋医学の病名では、どんな漢方薬を使うのかと勉強し始めました。

だって、その方が楽ですやん!
風邪→葛根湯とか、アトピー→消風散とか、不妊症→当帰芍薬散とか。

でも、さすがにそこまでお花畑脳じゃないので、一通り「病名=漢方薬」を覚えた時に「いや、そもそも漢方と西洋医学って関係ないじゃん!」って嫌でも気づきます。

漢方家でなくとも「漢方は人それぞれの体質に合わせるもの」みたいなことは最初からモヤ〜と知ってるので実は病名で漢方薬を選んでいる時も「いや、西洋医学の病名は、その人の体質じゃないし」って思っていました。

そして、漢方の治療概念や考え方、診断方法の勉強を進めていくと、どんどん、西洋医学から離れていっちゃって、勉強すればするほど、西洋医学とは似ても似つかないものになっていきます。

しかし、漢方治療の第一歩である体質診断は、マニュアルがあってできるようなものではなく、漢方理論を全部、駆使して診断していかないといけないようなものなので、病名漢方の次は、症状漢方に逃げました。

症状が、一人一人違う体質を表しているから症状に当てはめたら体質で漢方薬を選んだことになるよね。と勝手に思い込んで。
しかし、これも結局、病名でマニュアル的に選ぶことと根元の方法が変わらないのです。
そこに漢方独特の根本的な治療していく治療方針が欠落していたのです。

そこからは漢方修行中、実践で治療経験を積み重ね、自分や家族、今のお店で患者さんの治療経験を積み重ねながら、体質である「証」を分析し根本的に治療していく治療方針をつくることができるようになりました。

何が言いたいかというと、ツムラから西洋医学の病名で漢方薬を処方できるマニュアルを教えてもらっても、普通の感覚だったら「いや、西洋医学の病名と漢方薬、関係ないしょっ!」ってなるわけです。

ちょっと漢方の本に手をのばせば、西洋医学から見たら、意味不明、訳がわからないことで埋め尽くされていることに、当時のお花畑脳の僕でも気づいたのです。
医療のド素人の人が読んでも、西洋医学とは全く違うって最初の5ページで気づきますよ。

実際に真面目に漢方をやっている先生はそうやって病名・症状マニュアル漢方から離れて、その訳のわからない理論の勉強に突入していき、病名漢方をやっているのは「漢方家として恥ずかしいこと」とう認識に変わっていきます。

なのに、副作用があろうが、西洋医学の病名で漢方薬の処方することを続けられるのは、医者の元の性質もあるんじゃないかと思うのです。

来る日も来る日もアトピーにステロイド。工夫したってランクが変わるくらい。
花粉症や鼻炎、蕁麻疹にアレロック。
不妊症にクロミッド、HCG注射、ルトラール、ソフィアA。
無月経や月経困難症にバカみたいにピル。
ちょっと困った自体に陥ったら「手術しかないです」

普段の西洋医学の治療もマニュアルなんですよ。見事に。
僕が漢方家だから言ってるのではなく、僕も僕の家族もマニュアル以外の治療をしてもらったことがありません。

僕は医学知識があり、西洋医学の治療のガイドラインを知っているので、どこの病院に行ってもバリバリのマニュアルでやっているのがモロバレ。

そして、ガイドラインの流れのようにいかなくなったら、初回の自信満々、上から目線の説明が急に萎んで、ひたすら効くかどうかも分からない薬を出し続けて、漫然と薬の種類を増やしていくか、「手術しかないですね」の一言。

ちなみに僕は、1度、死にかけて、1度指の関節が曲がらなくなったことがありますが、どちらも病院の見解は「死にかけている原因がわかりません」「指は治りません」ということは自信たっぷりに宣言していただけました。

40年以上、生きていますが、今のところは医者に助けてもらった記憶が一度もありません。(救急、外科手術、歯科、産科には助けてもらっています)

病院の薬に関しては医者に処方されるまでもなく、事前に何を使えばいいのか、どんな作用機序なのか、わかっていますので、薬でよくなったことはありますが、病院(市役所)で処方箋という事務手続きをしてもらったようなものですね。

「マニュアルで治療」は言わば、医者の十八番。
ツムラは復活のために、見事にそこにマーケティング的に漬け込んだのでしょう。
いいかげんなマニュアル漢方処方になる下地は実は医者自身が昔から持っていたと思います。

ツムラも昔は部会によっては、地道に体質診断して治療方針を打ち立てて、漢方薬を選んでいくという勉強会をやっているところもありました。

でも、うちの相談もそうですが、実際に真剣に相談となると問診だけで書いてもらうのに20分かかることもあります。
そこから更に症状の1つ1つの状態を詳しく聞いていきます。
要は一人一人の体質に本気で合わせてたら、めっちゃ時間がかかります。

なので、漢方薬局業界でもそうですが、本当に漢方薬のみの治療だと滅多にちゃんとやっていけるほど売り上げは上がりません。
現に漢方薬局も専門とか言いながら、乳酸菌とか、深海ザメエキスとか、かき肉エキスなどのサプリを漢方とか漢方薬の補助とかいって、無理やりくっつけて売り上げを膨らませないとやっていけないところも多いのです。

医は仁術。聞こえはいいですが、実際はイバラの道。
ましてや上場会社のツムラの最も優先すべき目的な「売り上げ」です。
どれだけキレイ事を並べようが上場会社は立派な目標よりも、とにかく株主のために「売り上げ」を何がなんでもあげないといけないのです。

そういった背景もあるのか、昔の地道な勉強会もなくなっていきました。

残念ながら、人を治すことと商売は矛盾するのです。
だから倒産を回避するためとか売り上げ倍増を目的とすると治療はうまくいきません。
手前味噌にはなりますが、漢方は昔から宮廷系のお金を気にしないでよい位置づけか、町の個人の漢方でないと成り立たないのだと思います。

もちろん、うちでも存続のための売り上げは必要ですが、それ以前に患者さんから「漢方マニアの変態」と言われるほど、漢方が好きじゃないとダメじゃないかと思います。


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お問い合わせはこちらまで。


posted by 華陀 at 17:10| Comment(0) | 漢方ってなんだろう? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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