うちに度々ある質問です。
病院の漢方と漢方専門店との違いをうちのWebサイトや過去記事にも書いてありますが、この問題で一般の方には大きな誤解がありますので、まとめて書いてみようと思い、今回はこんな複雑なタイトルになっております。
多分、皆さんがイメージしている答えは、「品質や成分が違うんじゃないか」と思っているのではないでしょうか。
なんとなく、漢方薬専門店の方がイイものを扱っているとか、成分が強くて良い。みたいなイメージがあるみたいですね。
これは、あながち間違いではないですが、正解ではありません。
本当かどうかはわかりませんが、漢方業界では、まことしやかに「ツムラの漢方薬は3倍量飲まないと効かない」なんて言われています。
なんせ、そのツムラの漢方薬を扱っている当の病院の先生が講演で言ってたこともある位なので、信憑性は高いのかもしれません。
保険適応で扱える漢方薬には薬価という問題があります。
(薬価とは国が保険適応になっている薬の値段を決めます。メーカーなどが勝手に定価を決めることができません)
自然の作物を使う漢方薬では利益を出そうと思っても薬価上、定価が決められ、会社独自で漢方薬の定価を上げることができないので、コストカットしか方法がありません。
漢方薬のコストカットとは、ようするに漢方薬の構成している生薬で安いものを使う事です。
現に昔は複数の漢方薬メーカーが保険適応の漢方薬を提供していましたが、今は病院相手では利益が出ないため、ほとんどのメーカーが撤退しています。
そういったことで、確かに皆さんがイメージしているような、病院の漢方薬は粗悪で漢方薬専門店の漢方薬は上質のものっぽい。ということは、実際にあるかもしれません。
しかし、漢方治療においては、それよりも重要なことがあります。
それは漢方治療は漢方薬の成分よりもなによりも、その人の体質に合わせなければ効かないということです。
漢方は西洋医学とは効果や理屈が違います。
僕は修行時代に一時期、ツムラの一般用漢方薬で治療していたことがありますが、確かに効きは弱い感じはありましたが、それなりに治していました。
効果が弱いものであっても、体質にちゃんと合わせてやれば、それなりに効くものです。
逆にものすごく品質の良い効果の高い漢方薬であっても、体質に合っていなければ漢方薬は効きません。
東洋医学の難しいところはココですね。
漢方薬の最も重要なポイントを優先度で並べると、
@その人の東洋医学的な体質を診断しているか。
A診断した体質に最適な漢方薬を選ぶ事ができているか。
B品質の良い漢方薬を使用しているか。
この3つが揃っているかどうかです。
先程もお話したように重要なのは@とAで、これがクリアできていたらBは大きな問題ではありません。品質が良いに越したことはないですが。
現状は悲しいことですが大半の病院と漢方専門と銘打っている店が@とAを実践できていません。
メーカーからもらったマニュアルで合わせているだけです。
わかりやすくいえば、先生が自分で分析、診断せずにマニュアルを見て効くか、効かないかわからないのにテキトーに処方しているだけ。
なので、病院と漢方専門店との比較というのは、ちょっとズレがあるかもしれません。
病院でも保険適応でなく実費でちゃんと漢方的な体質判断をして、それに適した漢方薬を処方しているところもあります。
逆に漢方薬専門店でも、専門店っぽくは見せていても、実際は漢方医学理論の五行論を一方的に説明するだけで、東洋医学的な問診もとれないし体質も診断できない店なんてゴロゴロあります。
厳密にみたら、病院と漢方専門店の違いを比較するのではなく、病院も専門店もひっくるめて治療医学としてやっているところなのか?
販売としてテキトーにやっているところなのか?の違いをみることが重要です。
そういう意味では漢方薬は容易に治療から販売に変身します。
違いをみるポイントは、
@西洋医学の検査や診断でなく西洋医学とは別で東洋医学的な体質を診断するためにわざわざ問診をとっているか。
A西洋医学の診断の病名でなく東洋医学的な体質を診断しているか。
チェックするのは、この2点です。
これがなければ漢方薬を処方していても、そこはただの「漢方薬の販売」をしているだけで、例え病院であろうが東洋医学の治療ではありません。
西洋医学的な漢方薬の販売という意味不明な新たなジャンルです。
あなたが西洋医学とは違う東洋医学の治療を求めているなら、これからは「病院か漢方専門のお店のどちらがいいのか?」ではなく、@とAをちゃんとまじめにやっているところか、どうかをみていったほうが、よいかと思います。
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【このブログの著者】
まごころ漢方薬店 国際中医師 松村直哉